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昭和三五年に,わが国の犯罪とその対策の現況を明らかにしようとの意図で創刊されたこの犯罪白書も,ここに七版を重ねることとなって,すでにその基盤も安定してきたように思われる。しかし,一方,犯罪の動向は,一年の間にそれほど著しい変化を見せることは少なく,また,その対策としての諸制度も急に全く姿を変えてしまうものでもない。したがって,本書の内容も,ある程度固定化するのを避けられない。昨年度は,創刊号にならって,一般的・基本的問題の説明に重点をおいたのであるが,本号は,再び毎年の例にもどり,副題として,「少年犯罪とその対策」の問題を採り上げ,これに重点をおくこととした。少年犯罪については,毎号,とくに別の編を設けて記述が行なわれているのであるが,最近,この問題がとくに注目を浴びているので,例年よりやや詳細な記述を行なうことに努めた。もっとも,統計その他の資料が不足なため,当初予期したほどの内容を盛り得なかった点もある。
犯罪白書が,刑事関係の実務家や学者等の間で広く利用されているのは,まことにうれしいことであるが,なお,一般部外の人々にもさらに広く読まれて,犯罪対策についての関心がいっそう高まることを念願している。そうした意味から,例年のとおり,制度や手続きの紹介にわたる事項もくりかえし記述しているしだいである。 本書は,全体を三編に分け,第一編は,犯罪の概観として,刑法犯・特別法犯の概況のほか,とくに,女子犯罪の概況を記述し,特殊犯罪として交通・選挙・公務員および外国人に関する犯罪を採り上げた。第二編は,犯罪者の処遇として,犯罪の捜査,検察,裁判,矯正,仮釈放および更生保護の現況を紹介した。第三編は,少年犯罪の動向とその対策として,少年犯罪を中心とするその概況,犯罪の原因と背景およびその対策等について記述した。なお,本書の内容は,各種統計資料入手の関係から,昭和三九年までを中心とした記述が多いが,正確な資料を利用できるかぎり(本年五月までに入手整理できたものを使用している。)昭和四〇年にわたって記述した部分もある。 おわりに,毎年のことであるが,本書をつくるにあたって,法務省各部局はもとより,最高裁判所事務総局および警察庁から協力と援助を受けたことを感謝し,あわせて,本書の内容に関する責任は,もっぱら当研究所にあることを明らかにしておきたい。 昭和四一年九月 長戸 寛美 法務総合研究所長 |