前の項目        目次 図表目次 年版選択

令和3年版 犯罪白書 第8編/第6章/第4節/3

3 まとめ

本編では,特殊詐欺を中心に,詐欺事犯について,分析・検討を進め,その傾向・特徴を踏まえた対策についても考察を加えた。

平成15年夏に特殊詐欺が目立ち始めてから,20年弱の時間が経過している。この間,我が国では,刑法犯認知件数や少年による刑法犯検挙人員が大幅に減少し,全体として,治安状況は大きく改善を果たしてきたが,特殊詐欺の動きは,これまで見てきたように,犯罪全体の動きとは様相を異にしている。警察庁を中心に,官民を挙げてその撲滅に向けた取組を進めた結果,21年に特殊詐欺の認知件数が激減するなど,一定の成果を上げてきたものと評価できるが,令和3年の現在でも,特殊詐欺事犯の発生は後を絶たず,依然として深刻な情勢にある。近年の我が国の社会・経済・国民生活の変化,すなわち,情報通信技術の進展に伴う通信・通話手段の多様化・高度化,電子マネー等に代表される支払手段の多様化,我が国の高齢化率や高齢者人口に占める一人暮らしの者の割合の上昇,大規模自然災害や新型コロナウイルス感染症の感染拡大のように人々の不安を昂じさせる事象の頻発等を背景に,特殊詐欺を実行する犯罪組織は,特殊詐欺の方法・手段を多様化・高度化させ続けている。今後も,特殊詐欺を実行する犯罪組織を撲滅するまで,官民を挙げた対策を講じ続けていく必要があるものと思われる。他方,特殊詐欺対策を進める上では,特殊詐欺事犯者の特性を把握することが有益であるが,これまで,特殊詐欺事犯者の実態,例えば,動機・理由,背景事情,再犯状況等について明らかにする資料は,必ずしも十分には存していなかった。本特集では,各種統計資料等を基に,詐欺事犯や詐欺事犯者に関する情報を整理して紹介したが,これに加え,特別調査により,特殊詐欺事犯者の実態の一端を明らかにできたものと考えている。今回の特集が,特殊詐欺対策や特殊詐欺事犯者を始めとする詐欺事犯者の再犯防止に向けた取組を進めるための一助となることを期待するものである。

なお,今回の特別調査では,主に,捜査段階や裁判段階の供述を基に,詐欺事犯者の犯行の動機・理由や背景事情を調査したものであり,そこから得られる情報には一定の制約があったことは否めない。法務総合研究所では,犯罪・非行をした者を対象に,その生活意識や特殊詐欺を含む犯罪・非行に関する意識等についての調査を行い,犯罪・非行をした者に対する有効な支援・指導を検討するための基礎資料を提供することを予定している。