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令和3年版 犯罪白書 第8編/第5章/第1節

第1節 調査の概要

今回,法務総合研究所では,全国各地の地方裁判所(支部を含む。以下この章において同じ。)において,平成28年1月1日から同年3月31日までの間に,詐欺(既遂・未遂を問わず,また準詐欺,電子計算機使用詐欺,犯罪収益移転防止法若しくは組織的犯罪処罰法の各違反又はこれらの幇助罪・教唆罪を含み,特殊詐欺(本編第3章第1節1項(3)参照)に該当する恐喝及び窃盗を含む(同項(3)参照)。以下断りのない限り,この章において同じ。)により有罪判決の言渡しを受け,調査時点で有罪判決が確定していた者を調査対象者とした。

その結果,特別調査における調査対象者の実人員は,1,343人(以下この章において「全対象者」という。)であり,この全対象者に関して,全国各地の地方裁判所において,平成28年1月1日から同年3月31日までの間に,詐欺により有罪判決の言渡しを受け,その後,有罪判決が確定した事件(以下この章において「調査対象事件」という。)について,裁判書等の資料に基づき,調査対象事件の概要,対象者の基本的属性・科刑状況・再犯状況等に関する調査を実施したほか(以下この章において「全対象者調査」という。),被害状況についても可能な限り調査した。全対象者調査の結果(再犯状況に関するものを除く。)については,次節で紹介する。

全対象者の中で,犯行の手口に特殊詐欺が含まれている者(以下この章において「特殊詐欺事犯者」という。)は,408人であった。特殊詐欺の検挙人員は大都市圏に多い傾向がうかがわれること(8-3-1-24図CD-ROM参照)なども踏まえ,特殊詐欺事犯者のうち,東京地方裁判所,横浜地方裁判所,さいたま地方裁判所及び千葉地方裁判所で判決の言渡しを受けた者(202人,49.5%)については,全対象者調査に加え,刑事確定記録等を用いて,可能な限り,より詳細な調査を行った(以下この章において「確定記録調査」という。)。特殊詐欺事犯者の調査の結果については,本章第3節で紹介する。

さらに,全対象者のうち,全部執行猶予の判決の言渡しを受け,その後,判決が確定した者(以下この章において「全部執行猶予者」という。)については,全対象者調査に加え,その判決の言渡日から平成31年3月31日までの間の再犯に関する調査を実施し,再犯に及んだ者については,その再犯に係る裁判書等の資料に基づいて,調査を実施した(以下この章において「再犯調査」という。なお,再犯調査における「再犯」は,調査対象事件の判決言渡し後に新たに行った犯罪に限る。)。再犯調査における調査対象者の実人員は,84人であった。再犯に関する調査(全対象者調査(再犯状況に関するものに限る。)及び再犯調査)の結果については,本章第4節で紹介する。