昭和50年代から再び増加し始めた交通事故発生件数は平成期に入っても増加を続け,平成16年に95万2,720件とピークを迎えた。負傷者数も同年に118万3,617人と最多となったが,その後17年からは交通事故発生件数,負傷者数いずれも減少を続け,元年より少ない水準となっている。死亡者数については,平成期を通じてほぼ一貫して減少傾向にあり,30年は元年の3分の1以下になっている。
過失運転致死傷等による検挙人員も,平成11年及び12年に急増するなどし,16年に90万119人となったが,その後は減少し,26年以降,元年を下回る水準となっている。
危険運転致死傷による検挙人員は,平成14年の322人から数値が入り始め,その後200人台から400人台で推移していたが,自動車運転死傷処罰法の施行により類型が拡大したこともあり,近時は600人を上回る。
道交違反取締件数(送致事件)は,平成4年がピークの117万2,677件であり,11年まで高止まりしていたが,12年以降は毎年減少し,30年はピーク時の4分の1以下となっている。うち酒気帯び・酒酔いの取締件数は,9年に平成期最多の34万3,593件となったが,その後減少傾向にあって,30年はピーク時の約13分の1まで減少している。
平成期の覚せい剤取締法違反検挙人員は,平成元年の1万6,866人から始まり,全体としては減少傾向にあるが,7年から13年まで1万7,000人を上回るなど,なお乱用期というべき時期が存在し,また平成末期においてもなお1万人を超える状況が続いている。年齢層別では,13年までは20歳代の検挙人員が最も多かったが,その後30歳代が最も多くなり,26年からは40歳代が最も多くなっているほか,50歳以上の検挙人員も30年は元年の約1.6倍となるなど,全体に高齢化している状況にある。
平成期の大麻取締法違反の検挙人員は,1,000人台から3,000人台で増減を繰り返し,平成9年には1,175人まで減少するなどしていたが,26年からは毎年増加し,30年は昭和46年以降最多の3,762人であった。他方,危険ドラッグに係る犯罪の検挙人員は,平成24年から増加し,27年には1,000人を超えたが,28年以降減少が続いている。
覚せい剤取締法違反による入所受刑者人員は,平成期において毎年5,000人台から7,000人台で推移していたが,平成30年は5,000人を割り込んだ。入所受刑者総数に占める比率は約2~3割であるが,女性入所受刑者総数に占める比率は3割を超え,平成初期においては5割を上回っていた。年齢層別では,男女共に,15年には30歳代が最も多かったが,元年・30年は40歳代が最も多くなっている。
覚せい剤取締法違反による出所受刑者の仮釈放率は,50%台から60%台で推移しており,全部執行猶予者の保護観察率は,平成初期は約2割であったが,次第に低下して平成18年に1割を割り込み,近年も10%台前半で推移している。
暴力団構成員及び準構成員等の人員の総数は,平成7年と8年に8万人を割り込んだが,再び増加に転じて16年には約8万7,000人にまで増加した。その後は大きく減少し,3万人台にまで至っている。暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者)検挙人員(危険運転致死傷,過失運転致死傷等及び交通法令違反を除く。)は,刑法犯では16年頃まで2万人前後で推移していたところがその後約1万人まで減少し,特別法犯では11年まで1万2,000人を上回っていたものが24年頃まで1万人前後で推移するようになり,28年以降は7,000人台まで減少している。罪名別では,覚せい剤取締法違反,賭博,恐喝等において暴力団構成員等の占める比率が高い傾向は余り変わっていない。
平成期の入所受刑者のうち暴力団関係者は,平成元年は6,000人以上と入所受刑者人員の約4分の1を占めていたが,6年以降は15年から18年まで4,000人を上回ったほかは減少傾向にあり,30年には1,000人近くまで減少,全入所受刑者に占める比率は6.0%まで低下した。罪名別では,覚せい剤取締法違反の構成比が高く,また,再入者の比率が非関係者における比率と比べて高いなどの傾向に大きな変化はない。
平成期における税法違反の検察庁新規受理人員は,所得税法違反においておおむね数十人から百数十人で推移しているが,例外として平成4年に397人,9年に230人となっている。法人税法違反においては,100人台から300人台で推移している。
経済犯罪につき,平成期の検察庁新規受理人員は,強制執行妨害では平成16年の60人が,公契約関係競売入札妨害及び談合では18年の584人が最多であった。また,会社法・商法違反では10年の162人,独占禁止法違反では7年の291人,金融商品取引法違反では24年の137人,出資法違反では15年の1,092人,貸金業法違反では同年の587人がそれぞれ最多であった。
知的財産関連犯罪につき,平成期の検察庁新規受理人員は,商標法違反では平成17年の896人,著作権法違反では26年の453人が最多であった。
不正アクセス行為の認知件数は,不正アクセス禁止法が施行された平成12年以降,増減を繰り返し,26年の3,545件が最多であった。
ネットワーク利用犯罪の検挙件数は,増加傾向にあり,平成30年は12年の約10倍であった。罪名別では,児童買春・児童ポルノ禁止法違反につき,30年は12年の17倍,脅迫につき約18倍であった。
平成期において,児童虐待に係る事件の検挙件数・検挙人員は大きく増加しており,平成30年は15年の約6.5倍・約5.9倍となった。罪名別では,特に暴行が顕著に増えている。被害者と加害者の関係で見ると,父親等によるものの割合が高く,そのうち養父・継父,母親の内縁の夫によるものも一定数を占めるが,母親等によるものについては,そのほとんどが実母によるものである。
配偶者暴力防止法違反の検察庁新規受理人員は,同法が施行された平成13年から数値が入り始め,24年の122人が最多である。配偶者間事案(被害者が被疑者の配偶者(内縁関係を含む。)であった事案)の刑法犯検挙件数は,11年以降増加傾向にあって,30年は元年の約12倍であった。被害者が女性である事件の件数が平成期を通じて総数の約7割から9割を占めている。
ストーカー規制法違反の検挙件数は,平成16年から統計が存在し,23年まで増減を繰り返した後,24年からは大幅に増加しており,30年は23年の約4.2倍であった。また,他法令での検挙件数も24年以降1,500件を超えて推移しており,最多であった28年は23年の約2.4倍であった。
平成期における女性(成人・少年)の刑法犯検挙人員は,平成初期に一旦減少したが,平成5年以降増加傾向となり,17年に戦後最多の約8万4,000人となった。その後は毎年減少し,30年は元年の約3分の2となっている。検挙人員総数に占める女性の比率(女性比)は,2割前後で推移しているが,詳細に見ると,5年に18.2%まで低下し,その後9年と10年に22.4%まで上昇するという動きを示している。罪名別では,女性における窃盗の割合は男性に比べて顕著に高く,元年・15年・30年のいずれの時点でも7割を超えており,特に,万引きの占める割合が高い傾向が続いている。
女性の入所受刑者は,平成5年から18年まで増加し,19年に若干減少した後おおむね横ばいで推移していたが,28年からは減少している。刑事施設における女性の収容率(全体)は,18年までは100%を超えていたが,女性受刑者の収容定員が拡大されたこともあって,23年からは低下している。
女子少年院入院者の人員は,平成13年に615人まで増加したが,その後減少傾向にあり,30年は13年の3分の1以下となっている。
女性の保護観察開始人員について,保護観察処分少年では,女子比が1割前後で推移しているが,平成17年には14.1%まで上昇している。少年院仮退院者の女子比も1割前後であったが,30年は6.9%まで低下している。仮釈放者では,女性比が平成初期の6%程度から30年は12.0%と上昇している。保護観察付全部・一部執行猶予者でも,平成初期は女性比が1割前後であったところが,30年は15.7%まで上昇している。
なお,女性の出所受刑者の仮釈放率は,平成期前半は約8割,平成20年以降でも約7割であり,男性と比べて高い。
平成期における高齢者(65歳以上をいう。以下この項において同じ。)の刑法犯(総数)検挙人員は,平成20年まで増加し,その後おおむね横ばいで推移しているが,非高齢者の各年齢層における検挙人員が減少傾向にあることから,高齢者率はほぼ一貫して上昇し,28年以降は2割を超えている。もっとも,人口比で見ると,一貫して非高齢者層より低い。罪名別では,窃盗が最も高い割合を占め,特に女性高齢者では約9割が窃盗であって,しかも万引きによる者の割合が約8~9割という傾向が続いている。このため,平成期における高齢者による窃盗の検挙人員は,上記刑法犯総数の傾向と同様の傾向を示しているが,他の罪名では,傷害・暴行の高齢者の人口比が上昇傾向にあり,殺人も非高齢者の年齢層が低下傾向にあるのに比べ横ばい傾向にある。
平成期における高齢者の入所受刑者の人員も,増加傾向を示し,高齢者率は平成元年が1.3%であったところ,30年は12.2%となっている。特に,女性高齢者の増加が顕著であり,女性の高齢者率は元年の1.9%が30年には16.8%となっている。
高齢者の仮釈放率は,出所受刑者全体と比べて常に低いが,それでも緩やかな上昇傾向を示しており,平成26年頃以降は約4割である。
来日外国人による刑法犯の検挙件数は,平成期前半に急増し,平成17年に3万3,037件となったが,その後は減少傾向となり,1万件前後まで減少している。来日外国人の刑法犯検挙人員は,16年に最多の8,898人となったが,17年から24年までは減少傾向にあり,近年は6,000人前後である。罪名別では,窃盗が検挙件数の半数以上を占めており,窃盗の検挙件数は18年から毎年減少していたが,29年にはわずかに増加している。傷害・暴行の検挙件数は,増加傾向にある。
来日外国人による特別法犯(交通法令違反を除く。)は,検挙件数・検挙人員共に,平成16年がピーク(1万5,041件,1万2,944人)であるが,その後減少し,25年からは増減を経て,近年やや増加傾向にある。罪名別では,入管法違反が多く,25年以降,検挙件数の約3分の2を占めている。
平成期の精神障害者等(精神障害者及び精神障害の疑いのある者)の刑法犯検挙人員が,検挙人員総数に占める比率は,平成元年・15年・30年のいずれも約1%である。罪名別検挙人員では,窃盗が最も多く,次いで傷害・暴行である。
入所受刑者総数のうち,精神障害を有すると診断された者の割合は,平成元年・15年は10%未満であったが,30年には15.0%を占める。また,少年院入院者総数のうち,精神障害を有すると診断された者の割合は,元年・15年は5%未満であったが,30年には22.6%を占めるようになった。
心神喪失者等医療観察法は,平成17年7月から施行されたが,その審判の検察官申立人員は,近年300人程度であり,対象行為別では,傷害,殺人,放火が多い。また,地方裁判所の審判の終局処理人員も同程度であり,そのうち入院決定は6~8割程度であった。
公務員による犯罪の検察庁新規受理人員は,平成15年には2万7,000人を超えていたが,近年は2万人を下回っており,罪名別では過失運転致死傷等が過半数を占める。次いで新規受理人員が多いのは職権濫用であるが,終局処理段階で起訴に至る者は若干名である。