平成期における刑法犯認知件数は,前半において急増,後半において急減した。すなわち,平成8年から戦後最多を毎年更新し,14年にはピーク(285万4,061件)に達したが,15年以降は毎年減少し,27年以降は戦後最少を毎年更新している。
検挙人員も類似の傾向を示すが,その増減のカーブは認知件数に比べ緩やかである。検挙率は,逆に前半において低下傾向,後半において上昇傾向を示し,平成13年に19.8%と戦後最低となっている。
罪名別では,認知件数,検挙人員のいずれにおいても一貫して窃盗が最も多く,次いで認知件数が多いのは平成初期においては横領(遺失物横領を含む。)であったが,平成中期以降は器物損壊であり,平成後期になると横領は暴行,傷害,詐欺をも下回るようになった。
窃盗の認知件数は,刑法犯認知件数の大半を占めるため,増減も刑法犯認知件数の増減と同様の傾向を示しており,ピークは平成14年(237万7,488件)であった。ただし,手口別には増減傾向に違いもあり,増減幅が大きいのは空き巣,自転車盗,車上・部品ねらい,自動販売機ねらい,ひったくり等であるが,逆に万引きや払出盗の増減幅はそれほど大きくない。
窃盗を除く刑法犯についても,全体で見ると平成期前半に増加し,後半に減少したが,認知件数のピークが平成16年(58万1,463件)と刑法犯全体・窃盗のピークより2年遅れ,また元年からピークまでの増加率は窃盗を上回る一方,減少幅は窃盗ほど大きくない。これは,他の犯罪が減少する中で,詐欺,暴行,傷害のようにそれほど減少せず,あるいはかえって増加している犯罪があることによる。
特に,詐欺の認知件数は,平成24年から若干の増加傾向を示しており,特殊詐欺の認知件数も同様である。特殊詐欺の被害総額は,27年以降減少している。
このほか,暴行の認知件数が,平成18年からおおむね高止まりの状況にあり,傷害の認知件数も余り大きく減っていない。脅迫の認知件数も,24年に急増し,その後も増加傾向にある。
性犯罪に関しては,刑法の一部改正がなされ,平成29年7月13日に施行されたところ,強制性交等(強姦),強制わいせつのいずれも認知件数では15年にピークがあってその後減少傾向にあるが,25年頃に若干の増加も見てとれる。
平成期の特別法犯検察庁新規受理人員は,減少傾向にあって,特に平成12年以降は毎年減少し,18年からは昭和24年以降での最少を毎年記録している状況にあるが,これはその大半を占める道交違反の減少によるものである。ただし,道交違反を除く特別法犯の検察庁新規受理人員も,小幅ではあるが平成20年から減少傾向にある。
逆に,罪名別で近年増加しているのは,大麻取締法違反,児童買春・児童ポルノ禁止法違反等であり,廃棄物処理法違反や銃刀法違反も減少幅は大きくない。
平成期の少年による刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等の検挙人員(触法少年の補導人員を含む。)は,平成8年から10年及び13年から15年に一時的な増加が見られるが,全体として減少傾向にあり,24年から戦後最少を記録し続けている。罪名別では,やはり窃盗が最も多い。
刑法犯検挙人員の少年人口比は,平成15年に平成期のピーク(1,265.4)が見られるが,16年以降急激に低下しており,もともと少年人口比が成人人口比を大きく上回る状況が続いてきたのに対し,成人人口比にはそれほど大きな変動がないことから,その差が急速に小さくなってきている。
平成期の犯罪少年による特別法犯(平成15年までは交通関係4法令違反を除き,16年以降は交通法令違反を除く。)の検挙人員は,平成初期に大半を占めていた薬物犯罪,特に毒劇法違反の減少に伴い18年まで大幅な減少傾向にあったが,19年からは軽犯罪法違反の増加に伴い増加し,24年からは再び減少した。薬物犯罪のうち,覚せい剤取締法違反の検挙人員は10年以降減少傾向にあるが,大麻取締法違反は平成期で増減を繰り返しており,26年からは連続して増加している。