我が国による法制度整備支援は,その多くが政府開発援助(ODA)の枠組みで,独立行政法人国際協力機構(JICA)や関係者の協力により行われてきたが,法務省も,平成13年(2001年),これを所管する部署として法務総合研究所内に国際協力部(ICD:International Cooperation Department)を設置し,職員の派遣,支援対象国の関係者の研修等の支援活動を活発に展開している。我が国は,平成6年(1994年)にベトナムに対する支援を開始して以来,カンボジア,ラオス,インドネシア,モンゴル,ウズベキスタン,中国,ネパール,東ティモール,ミャンマー,バングラデシュ等の主としてアジア諸国に対して支援を行ってきている。法制度整備支援の実施状況は,3-3-5-2図のとおりである。支援の内容としては,民商事法分野のものが中心であるが,刑事法分野でも,ベトナム,ラオス,東ティモール,ネパール,ミャンマー等に対する支援を実施している。
ベトナムでは,平成6年(1994年)から法制度整備支援が開始され,刑事司法の分野では,ICDにおいて,JICAのプロジェクトに協力し,検察官向け執務参考資料の作成・普及を支援したほか,最高人民検察院等を対象に,刑事訴訟法の改正(平成27年(2015年)成立)や捜査・公判実務の改善等の支援を実施した。さらに,法務総合研究所と最高人民検察院との間で,日越双方の法制度を比較する共同研究を実施するなどした。
ラオスでは,平成10年(1998年)から法制度整備支援が開始され,刑事司法の分野では,ICDにおいて,JICAのプロジェクトに協力し,検察官向け執務参考資料の作成・普及を支援したほか,刑事訴訟法の執務参考資料等の作成等を通じて司法省,最高人民裁判所,最高人民検察院及びラオス国立大学及びその職員の能力の向上を支援した。
東ティモールでは,平成21年(2009年)からICDによる法案起草能力を強化するための研修等が行われ,刑事司法の分野では,UNODCやUNAFEIを始めとする国際機関とICDが連携するなどして,司法省職員,矯正職員,裁判官,検察官,弁護士等を対象とした現地セミナー,共同法制研究等を実施した。
ネパールでは,平成21年(2009年)から法制度整備支援が開始され,19世紀に制定された「ムルキ・アイン」(民事・刑事の実体法・手続法を包摂する法典)の分割改正作業が行われる中(平成30年(2018年)8月に新刑法,刑事訴訟法等が施行),刑事司法の分野では,UNAFEIとICDが協力し,検事総長府等を対象に,刑事法制の整備と運用改善のための現地セミナーや共同研究等を実施している。
ミャンマーでは,平成25年(2013年)から法制度整備支援が開始され,刑事司法の分野では,ICDにおいて,JICAのプロジェクトに協力し,裁判官・検察官向けの能力向上を目的としたセミナー・研修等を実施している。