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令和元年版 犯罪白書 第3編/第2章/第4節/コラム14

コラム14 少年院における修学支援の充実

在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図るためには,矯正教育によって,社会生活に適応する上で必要な知識,態度等を習得させるのみならず,出院後を見据えて社会復帰に向けた支援等を行い,社会内処遇への移行を円滑に行うことが大切である。昭和52年には,少年院の運営に当たっての基本的事項として,少年院送致の処分は,少年院における矯正教育のみによって完結するものではなく,施設内処遇と施設外処遇との有機的一体化を図るように運営することが明記された通達が発出されているが,この基本的な考え方は平成期に入っても受け継がれ,関係機関との連携の下,在院者の生活環境の調整,修学や就労の支援等が積極的に行われてきた。しかし,旧少年院法下では,このような社会復帰のための支援に関する法令上の根拠がないこともまた事実であった。

そうした中,平成22年12月の少年矯正を考える有識者会議提言において,「少年院は,(中略)個々の在院者に応じた就労支援,就学支援その他の社会復帰支援の一層の充実を図るべきである。」とされ,これを踏まえて27年6月に施行された新少年院法において,少年院による社会復帰支援が,少年院の業務として法律上明確に位置付けられることとなった(社会復帰支援については,本項(5)参照)。

現在は,在院者の意向を尊重しつつ様々な支援が行われており,そのうち,出院後の円滑な復学等を図るために行われる修学支援は,就労支援と並んでとりわけ充実強化が図られている。在院者が利用できる「修学支援ハンドブック」や「修学支援デスク」の整備に加え,高等学校卒業程度認定試験の受験については,受験指導モデル庁が指定されるなど取組が強化され,平成30年度には,全国13庁の少年院に高等学校卒業程度認定試験重点指導コースが設置された。各少年院においては,効果的な学習教材の選定,外部協力者による受験指導,民間学力試験の活用,入学試験受験のための外出・外泊の実施等,個別の事例に応じて工夫を凝らし,きめ細かな支援を行っている。加えて,仮退院後に社会内処遇を担当する保護観察所はもちろんのこと,学校,地方自治体,民間事業者,ボランティア団体等,地域の関係機関・団体の理解と協力を得られるよう努めながら,支援の拡充を図っている。少年院における高等学校卒業程度認定試験の受験者数は増加傾向にあるほか,学校との綿密な連携が奏功して復学した事例や大学に合格した事例もあるなど,成果は着実に表れてきている。

平成29年12月に閣議決定された再犯防止推進計画においても,重点課題の一つとして,学校等と連携した修学支援の実施等が掲げられた。修学支援が,在院者の社会復帰に当たっての選択肢を増やし,意欲や自信を持って社会生活を送るための土台作りにつながれば,再犯・再非行のない社会の実現にまた一歩近付くことができる。少年院の挑戦はこれからも続く。