高齢運転者に対して,自己の記憶力・判断力の状況を簡易な検査によって自覚させ,引き続き安全運転を継続することができるように支援することを目的として,道路交通法の一部を改正する法律(平成19年法律第90号)により,運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が75歳以上の者に対する認知機能検査が導入され,平成21年6月から開始された。75歳以上の運転免許保有者は,3年に1回の運転免許証の有効期間の更新時に認知機能検査を受けなければならないとされ,検査の結果,記憶力・判断力が低くなっていると判定され,かつ,一定期間内に信号無視等の特定の違反行為をした場合には,臨時適性検査として認知症の専門医の診断を受けなければならず,認知症と診断されると,運転免許の取消し又は停止処分がなされることとなった。
さらに,認知機能は,次回更新までの3年間に低下するおそれがあることから,平成29年3月に施行された高齢運転者対策の推進を図るための規定の整備等を内容とする道路交通法の一部を改正する法律(平成27年法律第40号)により,75歳以上の運転者について,一定の違反行為をした場合に臨時認知機能検査を行い,その結果が直近において受けた認知機能検査の結果と比較して悪化している場合に臨時高齢者講習を実施することとされたほか,運転免許証の更新時の認知機能検査又は臨時認知機能検査の結果,認知症のおそれがあると判定された者には,その者の違反状況にかかわらず,臨時適性検査の受検又は医師の診断書提出を要することとされた。
7-4-4-9図は,認知機能検査の受検者数及び検査結果の推移(平成21年以降)を見たものである。認知機能検査の受検者数は,増加傾向にあり,平成29年は,196万2,149人と,22年(118万5,886人)の約1.7倍であった。29年の受検者のうち,認知症のおそれがあるとの結果が出た者は,5万3,995人(2.8%)であった。
身体機能の低下等を理由に自動車の運転をやめる際には,運転免許の取消しを申請して運転免許証を返納することができるところ,7-4-4-10図<1>は,高齢者の自主返納による運転免許の取消件数の推移(最近10年間)を見たものである。平成20年以降の高齢者の自主返納による運転免許の取消件数は,毎年増加し続け,29年は40万4,817件と,20年の約14.4倍であった。29年の高齢者の自主返納による取消件数に占める75歳以上の者の割合は62.7%であった。
認知症による運転免許の取消・停止処分件数の推移(最近10年間)を見ると,7-4-4-10図<2>のとおりである。平成20年以降の認知症による運転免許の取消件数は,緩やかな増加を経て,26年から大きく増加するようになり,29年(3,084件)は前年と比べて約1.7倍(20年の約18.7倍)に増加した。このうち,警察活動等を端緒とするものは1,279件で,前年から2.5%の増加であったが,認知機能検査(前記臨時認知機能検査を含む。)を端緒とするものは,前年から約3倍と顕著に増加し,1,805件であった。