平成17年11月,高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号。以下「高齢者虐待防止法」という。)が制定され,以来,高齢者虐待に関する取組の充実・強化が図られてきた。同法では,養護者又は養介護施設従事者等が,その養護等する高齢者について行う身体的虐待,介護等放棄,心理的虐待,性的虐待及び経済的虐待(高齢者の財産を不当に処分することその他高齢者から不当に財産上の利益を得ることをいう。以下この節において同じ。)を,高齢者虐待と定義している。
全国の市町村及び都道府県において行われた高齢者虐待に関する相談・通報件数及び虐待判断件数の推移(平成18年度以降)を,養護者による高齢者虐待と養介護施設従事者等による高齢者虐待の別に見ると,7-3-7-4図のとおりである。
養護者による高齢者虐待の相談・通報件数については,高齢者虐待防止法が施行された平成18年度以降,途中24年度に減少したものの,増加傾向にあり,28年度は2万7,940件と,18年度の約1.5倍であった。同虐待判断件数についても,ほぼ同様の状況にあり,28年度は1万6,384件と,18年度の約1.3倍であった。28年度の養護者による虐待の被虐待高齢者総数は,1万6,770人であり,このうち,虐待の種別(重複計上による。)では,「身体的虐待」が1万1,383人(67.9%)と最も多く,次いで,「心理的虐待」(6,922人,41.3%),「介護等放棄」(3,281人,19.6%),「経済的虐待」(3,041人,18.1%)の順であった。また,被虐待高齢者のうち,男性は3,813人(22.7%)であるのに対し,女性は1万2,957人(77.3%)に上った(厚生労働省老健局の資料による。)。
養介護施設従事者等による高齢者虐待(平成23年法律第79号改正により高齢者虐待の対象となった65歳未満の養介護施設に入所等した障害者に対する虐待を含む。)の相談・通報件数については,平成18年度以降増加傾向にあり,28年度(1,723件)は,18年度の約6.3倍と顕著に増加した。同虐待判断件数については,同年度以降増加を続け,28年度は452件と,18年度の約8.4倍と顕著に増加した。28年度の養介護施設従事者等による虐待の被虐待高齢者総数は,870人(年齢不詳者57人及び養介護施設等に入所した65歳未満の障害者22人を含む。)であり,このうち,虐待の種別(重複計上による。)では,「身体的虐待」が570人(65.5%)と最も多く,次いで,「心理的虐待」(239人,27.5%),「介護等放棄」(235人,27.0%)の順であった。また,被虐待高齢者のうち,男性は256人(29.4%)であるのに対し,女性は614人(70.6%)に上った(厚生労働省老健局の資料による。)。
介護をしている親族による,介護をめぐって発生した事件で,被介護者が65歳以上,かつ虐待等により死亡に至った事例について年度別に推移を見ると,平成18年度から28年度まで,毎年度,20件台から30件台(死亡者は20人台から30人台)で推移しており,28年度は24件(同25人)であった(厚生労働省老健局の資料による。)。