高齢の仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,保護観察開始人員及び高齢者率の推移(最近20年間)を総数・女性別に見ると,7-3-5-1図のとおりである。
仮釈放者では,総数・女性共に,平成11年以降,高齢者の保護観察開始人員・高齢者率は増加・上昇傾向にあり,29年はいずれも前年より若干減少しているものの,29年の高齢者の保護観察開始人員は,10年と比べ,総数では約4.0倍,女性では約9.0倍に増加している。特に,70歳以上の人員は,総数では約6.8倍,女性では約20.1倍と増加が著しい(CD-ROM参照)。
保護観察付全部・一部執行猶予者でも,平成11年以降,高齢者の保護観察開始人員・高齢者率は増減を繰り返しながらも増加・上昇し続けているが,総数・女性共に,ここ2,3年は減少しており,29年の高齢者の保護観察開始人員は,10年と比べ,総数では約2.8倍,女性では8.5倍に増加している。特に,70歳以上の人員は,総数では約5.4倍,女性では25.5倍と増加が顕著で,総数では23年以降,女性では18年以降,70歳以上の人員が65〜69歳の人員を上回っている(CD-ROM参照)。
7-3-5-2図は,仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,保護観察開始人員の人口比の推移(最近20年間)を総数・女性別に見るとともに,これを年齢層別に見たものである。
仮釈放者では,65〜69歳及び70歳以上の保護観察開始人員総数の人口比は,平成11年以降,緩やかな上昇傾向にあるが,27年以降は,おおむね横ばいの状況にある。女性人員の人口比は,11年以降,増減を繰り返しながらも上昇傾向にあるが,ここ2年は,65〜69歳は低下,70歳以上は横ばいの状況にある。
保護観察付全部・一部執行猶予者では,65〜69歳の保護観察開始人員総数の人口比は,平成17年をピークとする増減を経ながらも,ほぼ横ばいの状況にある。70歳以上の人員総数の人口比は,11年以降,上昇傾向にあったが,ここ3年は若干低下している。女性人員の人口比は,65〜69歳では年による変動が大きいが,ほぼ横ばい傾向,70歳以上では緩やかな上昇傾向にある。
7-3-5-3図は,高齢出所受刑者の人員及び仮釈放率の推移(最近20年間)を総数・女性別に見たものである。
仮釈放による高齢出所受刑者人員総数は,平成11年以降,増加傾向にある一方,満期釈放等による高齢出所受刑者人員総数は,22年まで増加した後,増減を繰り返しながらも,ほぼ横ばいの状況にあり,これらを受けて,22年に28.3%まで低下した高齢出所受刑者の仮釈放率は,26年には40.1%に上昇し,27年以降はおおむね横ばいとなっている(CD-ROM参照)。また,高齢出所受刑者の仮釈放率は,出所受刑者全体の仮釈放率と比べ,一貫して20pt前後低く推移している(2-5-1-1図CD-ROM参照)。
女性の高齢出所受刑者の仮釈放率は,人員が少なかった平成15年頃までは年による変動が大きいが,16年以降は若干の増減を経つつおおむね60%前後で推移しており,高齢出所受刑者人員総数の仮釈放率と比べ,一貫して高い。
仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,有前科者(今回の保護観察開始前に罰金以上の刑に処せられたことがある者をいう。以下この項において同じ。)の保護観察開始人員及び有前科者率(保護観察開始人員に占める有前科者の人員の比率をいう。以下この項において同じ。)の推移(最近10年間)を年齢層別に見ると,7-3-5-4図のとおりである。
仮釈放者では,平成21年から28年まで,懲役・禁錮(全部実刑・一部執行猶予)の前科がある高齢者の保護観察開始人員は増加し続け,懲役・禁錮(全部執行猶予)の前科がある高齢者の保護観察開始人員も増加傾向にあり,29年は,20年と比べ,それぞれ約2.2倍,約1.8倍に増加している(CD-ROM参照)。一方,罰金の前科がある高齢者や前科なしの高齢者の保護観察開始人員は,若干の増減を経つつ,おおむね横ばいで推移している。これらの結果,高齢の仮釈放者の有前科者率は上昇傾向にあり,29年は,20年と比べ,11.4pt上昇している。また,高齢者の有前科者率は,非高齢者の有前科者率と比べ,一貫して高い。
保護観察付全部・一部執行猶予者では,高齢有前科者の保護観察開始人員は年による変動が大きいが,有前科者率は緩やかな上昇傾向にあり,平成29年は,20年と比べて,6.2pt上昇している。また,高齢者の有前科者率は,非高齢者の有前科者率と比べて顕著に高く,一貫して30pt前後高く推移している。
7-3-5-5図は,仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,保護観察開始人員の罪名別構成比を年齢層別に見るとともに,男女別に見たものである。仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者のいずれにおいても,高齢者は非高齢者と比べ,窃盗の構成比が高い一方,覚せい剤取締法違反の構成比が低く,その差は女性においてより顕著である。
7-3-5-6図は,仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,保護観察開始人員の居住状況別構成比を年齢層別に見るとともに,男女別に見たものである。
仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者のいずれにおいても,高齢者は非高齢者と比べ,親と同居している者の構成比が低い一方,配偶者やその他親族と同居している者の構成比が高い。また,これらを合わせた親族の構成比は,仮釈放者,保護観察付全部・一部執行猶予者共に,男性の高齢者では非高齢者と比べて顕著に低いのに対し,女性の高齢者では非高齢者との差が認められない。
さらに,男性の仮釈放者では,高齢者は非高齢者と比べ,更生保護施設の構成比が高く,半数近くを占めているのに対し,女性の仮釈放者では,高齢者は非高齢者と比べ,更生保護施設の構成比が低く,約6分の1にとどまっている。また,男性の保護観察付全部・一部執行猶予者では,高齢者は非高齢者と比べ,単身居住の構成比が顕著に高く,半数近くを占めているのに対し,女性の高齢者では,非高齢者と比べると単身居住の構成比は高いものの,約3割にとどまっている。
7-3-5-7図は,仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,保護観察開始人員の生計状況別構成比を年齢層別に見るとともに,男女別に見たものである。仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者のいずれにおいても,貧困と生活保護受給を合わせた構成比が,男性では,高齢者は非高齢者と比べて顕著に高いのに対し,女性では,高齢者は非高齢者と比べてやや低い。