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平成30年版 犯罪白書 第2編/第4章/第2節/2

2 作業
(1)概況

懲役受刑者には,法律上,作業が義務付けられている(労役場留置者も同様である。)。このほか,禁錮受刑者及び拘留受刑者も希望により作業を行うことができる。平成29年度における作業の一日平均就業人員は,4万5,968人であった。また,禁錮受刑者は,30年3月31日現在で,85.9%が作業に従事していた(法務省矯正局の資料による。)。

(2)作業の内容等

受刑者は,作業として職業訓練を受けることがあるほか,生産作業(木工,印刷,洋裁,金属等の物品製作作業及び労務提供作業),社会貢献作業(労務提供作業であって,公園等の除草作業など社会に貢献していることを実感することにより,その改善更生及び円滑な社会復帰に資すると認められる作業),自営作業(炊事,清掃,介助,設備の修繕等の刑事施設の運営に必要な作業)に従事する。これら職種は,受刑者の希望も参酌し,適性に応じて指定される。なお,平成29年度において社会貢献作業を実施した施設数及び対象受刑者数は,23庁(刑務支所を含む。)278人であった(法務省矯正局の資料による。)。

作業は,刑事施設内で行うものが大部分であるが,刑事施設が管理する構外作業場で行うものもあり,さらに,刑事施設の外の事業所の協力を得て,受刑者を職員の同行なしに,その事業所に通勤させて同所での業務に従事させる(職業訓練を受けさせることを含む。)こともある(外部通勤作業)。平成30年3月末日現在,外部通勤作業を実施しているのは,8庁23人であった(法務省矯正局の資料による。)。なお,前記の外出,外泊及び外部通勤作業の運用拡大を図るため,GPS機器の活用が制度化されている。

作業を行う時間は,改善指導等の矯正指導(次項参照)を行う時間と合算して,一日につき,原則として8時間を超えない範囲内とされている。土曜日,日曜日,祝日,年末年始等には,炊事の作業等その性質上連日行うことが必要な作業を除き,作業は実施しない。

作業の収入は,全て国庫に帰属する。平成29年度における作業による歳入額は,約39億円であった(法務省矯正局の資料による。)。

他方,受刑者には,従事した作業に応じ,作業報奨金が原則として釈放時に支給される。作業報奨金に充てられる金額(予算額)は,平成29年度には,一人1か月当たり平均で4,340円であった(法務省矯正局の資料による。)。また,29年の出所受刑者が出所時に支給された作業報奨金の金額を見ると,5万円を超える者が35.0%,1万円以下の者が15.5%であった(矯正統計年報による。なお,出所受刑者の年齢層別の作業報奨金支給額については,7-5-2-4図参照)。

(3)職業訓練

刑事施設では,受刑者に職業に関する免許や資格を取得させ,又は職業上有用な知識や技能を習得させるために,職業訓練を実施している。職業訓練には,総合訓練,集合訓練及び自庁訓練の三つの方法がある。総合訓練は全国の刑事施設から,集合訓練は主に各矯正管区単位で,自庁訓練は刑事施設ごとに,それぞれ適格者を選定して実施している。男性受刑者に対する総合訓練は,同施設として指定された7庁(山形,福井,山口及び松山の各刑務所並びに函館,川越及び佐賀の各少年刑務所)で実施している。女性受刑者に対する職業訓練は,各女性施設で実施している一部の職業訓練種目について,他の女性施設からも希望者を募集して実施している。

刑事施設では,平成29年度には,建設機械科,溶接科,自動車整備科,情報処理技術科,介護福祉科等の合計48種目の職業訓練が実施され,1万3,786人がこれを修了し,溶接技能者,ボイラー技士,情報処理技術者等の資格又は免許を取得した者は,総数で7,644人であった(法務省矯正局の資料による。)。

平成30年3月からは,出所後の就労先への定着を図り,再犯防止につなげていくことを目的として,在所中に内定を受けた者などを対象に,内定を受けた事業所等において一定期間就労を体験させる職場体験制度が,職業訓練の一環として位置付けられた上で導入されている。