平成23年6月,情報処理の高度化に伴う犯罪に適切に対処するなどのため,刑法が一部改正され(平成23年法律第74号),不正指令電磁的記録作成等(いわゆるコンピュータ・ウイルスの作成・供用等)の罪が新設された。また,24年3月,不正アクセス禁止法が改正され(平成24年法律第12号。同年5月1日施行),他人のIDやパスワードの不正取得等の罪が新設され,不正アクセス行為に対する罰則も,法定刑の上限が懲役1年から3年に引き上げられるなど強化された。
4-5-1-1図は,不正アクセス行為(不正アクセス禁止法11条に規定する罪をいう。)の認知件数の推移(平成12年以降)を見たものである。認知件数は,増減を繰り返しており,平成28年は前年(2,051件)より減少し,1,840件(前年比10.3%減)であった。
平成28年の不正アクセス行為の認知件数について,被害を受けた特定電子計算機(ネットワークに接続されたコンピュータをいう。)のアクセス管理者(特定電子計算機を誰に利用させるかを決定する者をいう。)別の内訳を見ると,被害は,「一般企業」が圧倒的に多く(1,823件),「プロバイダ」は6件,「行政機関等」は5件,「大学・研究機関等」は2件であった。また,不正アクセス行為後の行為の内訳を見ると,「インターネットバンキングでの不正送金」が最も多く(1,305件,70.9%),次いで,「インターネットショッピングでの不正購入」(172件,9.3%),「オンラインゲーム,コミュニティサイトの不正操作」(124件,6.7%),「メールの盗み見等の情報の不正入手」(91件,4.9%)の順であった(警察庁生活安全局,総務省情報流通行政局及び経済産業省商務情報政策局の資料による。)。
コンピュータ・電磁的記録対象犯罪(電磁的記録不正作出・毀棄等,電子計算機損壊等業務妨害,電子計算機使用詐欺及び不正指令電磁的記録作成等),支払用カード電磁的記録に関する罪及び不正アクセス禁止法違反の検挙件数の推移(最近5年間)は,4-5-1-2表のとおりである。コンピュータ・電磁的記録対象犯罪及び不正アクセス禁止法違反のいずれの検挙件数も,平成27年から2年連続で増加しており,28年の支払用カード電磁的記録に関する罪(刑法第2編第18章の2に規定する罪)の検挙件数は,前年の約5.2倍と著しく増加した。
なお,罪名ごと(罪名別の統計が存在するものに限る。)の検察庁終局処理人員は,CD-ROM資料4-6参照。