その他の捜査等における国際協力としては,国際刑事警察機構(ICPO:International Criminal Police Organization)による刑事警察の相互協力も行われている。ICPOは,平成27年(2015年)12月末現在,190の国・地域の刑事警察を構成員とする国際機関であり,刑事警察間における最大限の相互協力の確保・推進及び犯罪の予防・鎮圧に効果的な制度の確立と発展を目的として,各国・地域の警察及び法執行活動における情報交換や連携の促進を図っている。ICPO事務総局においては,加盟警察機関間での迅速かつ確実な情報交換を行うための独自の通信網を運用するほか,指紋,DNA,国外逃亡被疑者・国際犯罪者,紛失・盗難旅券,盗難車両等の各種データベースを整備し,国際的なデータバンクとしての機能を果たしている。また,各刑事警察は,ICPOの枠組みで発展してきた各種の国際手配制度を通じ,被手配者である国外逃亡被疑者等の所在発見を求めたり(青手配書),被手配者の犯罪行為につき警告を発し,各国警察に注意を促す(緑手配書)など,全加盟国の警察の組織力を活用して犯罪防止活動や捜査の進展を図ることができる。我が国の国家公安委員会も,ICPO経由で受けた外国の刑事事件の捜査協力の要請に応じた措置を採ることができる。
ICPO経由での国際協力件数の推移(最近10年間)は,2-6-3-2表のとおりである。
我が国では,平成21年(2009年)8月から入国管理局においても,紛失・盗難旅券を悪用したテロリストや我が国での不法行為を企図する者等の不法入国事案の発見に努めるため,ICPOの紛失・盗難旅券データベースの情報を活用した入国審査を実施してきたが,海外において邦人が被害者となるテロ事件が発生するなど,我が国を取り巻くテロの情勢が厳しさを増していることを踏まえ,テロリストの入国を水際で阻止して国内でのテロを未然に防止するため,平成27年(2015年)10月に出入国管理インテリジェンス・センターが設置され,同センターにおいて国内外の関係機関から必要な情報を収集して分析を行い,出入国審査等の現場に提供する運用が開始されている。また,平成28年(2016年)10月から,全国の空海港において,上陸審査時に外国人から提供を受けた顔写真とテロリスト等の顔画像との照合を実施している。