我が国は,逃亡犯罪人の引渡しについてと同様に,刑事共助条約・協定を締結していない外国・地域との間でも,その国・地域の刑事事件の捜査・公判に必要な証拠の提供等の共助(以下「捜査共助」という。)の要請を受けた場合,国際捜査共助等に関する法律(昭和55年法律第69号)を始めとする国内法令が定める要件及び手続に基づき,相互主義の保証の下で,外交ルートを通じて捜査共助を行うことが可能であり,また逆に,その国・地域の法令が許す限り,我が国の捜査・公判に必要な証拠の提供等を受けることもできる。
これに加えて,刑事共助条約又は協定を締結することで,締結国間では,拒否事由がない限り,相互に共助の実施を義務付けられるほか,共助の要請・受理等について,外交ルートを経由することなく,指定された「中央当局」(後記各条約又は協定において,我が国については,要請を行う場合は法務大臣若しくは国家公安委員会又はこれらがそれぞれ指定する者であり,要請を受理する場合は,法務大臣又はこれが指定する者である。)間で行うことができるため,捜査共助の迅速化・効率化を図ることができる。
我が国では,アメリカ合衆国(平成18年(2006年)発効),大韓民国(平成19年(2007年)発効),中華人民共和国(平成20年(2008年)発効),中華人民共和国香港特別行政区(平成21年(2009年)発効),欧州連合(平成23年(2011年)発効)及びロシア連邦(平成23年(2011年)発効)との間で,それぞれ刑事共助条約又は協定を締結しており,現在30以上の国・地域との円滑な協力体制が構築されている。
外国・地域との間で,我が国が捜査共助を要請し,又は要請を受託した件数の推移(最近10年間)は,2-6-3-1表のとおりである。なお,捜査共助についても,我が国から要請する際には,検察庁からの依頼に基づく場合と警察等からの依頼に基づく場合とがある。