法務総合研究所が行った少年・若年者及び初入者に関する主要な研究は,5-2-2-1表のとおりである。
法務総合研究所では,非行少年の特質を明らかにするため,少年鑑別所入所少年を主な対象として,非行少年の生活意識や価値観等に関する意識調査を定期的に実施している(平成10年版犯罪白書,17年版犯罪白書,23年版犯罪白書,研究部報告4,32,46)。近年では,23年版犯罪白書及び研究部報告46で,調査対象者を少年鑑別所入所少年だけでなく,30歳未満の若年受刑者にも拡大し,少年期から成人期にかけての非行・犯罪のリスク要因や立ち直りに必要な指導・支援について検討した結果を報告している。意識調査の結果,少年鑑別所入所少年,若年受刑者共に,安直な職業観を有する者や,対人関係上の問題が就労生活の途絶や無職生活の継続に影響していると見られる者が一定数いること,少年院送致や保護観察等の処分を重ねるほど,処分の受け止め方に真摯な態度が薄れてしまうことが示唆された。加えて,23年版犯罪白書では,少年院出院者の追跡調査も実施している。18歳から19歳で少年院を出院した者について,出院後の刑事処分の有無を追跡調査した結果,調査対象者の38.5%が,25歳までに何らかの刑事処分を受けていた。また,少年院出院後,25歳までに刑事処分を受けた者について,その犯行の時期を見ると,20歳以下で初回の犯行(刑事処分に係る犯行のうち,出院後の最初の犯行)に及んでいる者が半数を占め,22歳の前半までに初回の犯行に及んでいる者が約8割に上り,少年期に非行があった者の成人の前後数年間における再犯防止対策の重要性が示されている。
こうした非行少年全般を調査対象とした研究のほかに,年少少年(研究部報告13),強盗事犯少年(平成15年版犯罪白書,研究部報告25),重大事犯少年(研究部報告31,35,45),来日外国人少年(研究部報告47,51)といった非行少年の特性や特定の事犯に注目して,各種記録の調査等により,その非行の実態や非行少年の資質面・環境面の特徴を明らかにしようとする研究も行っている。そのほか,海外の少年非行の動向や少年司法制度についての紹介(10年版犯罪白書,17年版犯罪白書,研究部報告5,45),少年保護事件の審理及び処分状況等の分析(研究部報告3),少年院在院者の被虐待経験についての調査(研究部報告11,19,22)など,少年非行に関する課題について,様々な観点から研究を行っている。
総合対策では,対象者の家族等からの相談に応じ助言等を行う態勢を強化するなどして,家族等による監督・監護の強化を図ることが求められているが,研究部報告54「非行少年と保護者に関する研究」では,少年院出院後の少年と保護者に対する継続的支援の在り方を検討するため,少年院出院者とその保護者に対し,出院時とその6か月経過後の2回にわたってアンケート調査を実施している。その結果,少年と保護者のいずれも,更生支援に対するニーズは高く,特に,気軽な相談相手を必要としていること,保護者においては,家族支援や保護観察終了後の支援,ワンストップサービス等の支援についても必要と考えていることが明らかになった。