総合対策では,少年・若年者及び初入者に対しては,再犯の連鎖に陥ることを早期に食い止めるために,個々の犯罪・非行歴,家庭環境,交友関係,発達上の課題,生活設計等を的確に把握し,これらに応じた指導・支援を集中的に実施することとされている。また,対象者の家族等からの相談に応じ助言等を行う態勢を強化するなどして,家族等による監督・監護の強化を図る,対象者を社会貢献活動や社会参加活動に参加させ,コミュニケーション能力の伸長を図る,といった取組も求められている。
非行少年については,従前から個々の特性に応じた処遇が行われてきたが,少年の特性を的確に把握するための取組の一つとして,平成25年度から,少年鑑別所において法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)の運用が開始された(第3編第2章第3節3項(1)ア参照)。MJCAは,対象者の再非行の可能性及び教育上の必要性を定量的に把握するためのものであり,少年鑑別所に入所した約6,000人の少年の実証データを踏まえ,鑑別実務に基づく知見も加味して再非行等に密接に関連する52の調査項目が選定されており,統計学的に信頼性・妥当性が確認されている。これにより,少年院における教育や保護観察所での処遇がより一層効果的に展開されることが期待されている。
少年院においては,個々の在院者の有する事情に応じ「特定生活指導」が行われるなど,在院者の特性に応じた指導・支援を系統的に行う仕組みが構築されている(第3編第2章第4節2項参照)。加えて,発達上の課題を抱え,処遇上特別の配慮を必要とする在院者に対して,少年院における処遇を効果的に実施するためのガイドラインの策定にも取り組んでいる。
法務省保護局においては,平成23年度・24年度に,学識経験者,保護司,更生保護関係職員等による「少年処遇研究会」を開催し,保護者に対する措置の充実,少年院出院者の受皿作り,就労支援といった,少年に対する保護観察処遇を取り巻く課題についての検討を行い,その結果を踏まえて,更に効果的な再犯・再非行防止策の検討を進めている。
こうした各機関における取組に加え,関係機関が連携した取組も盛んに行われている。少年院では,家庭裁判所,地方検察庁,地方更生保護委員会,保護観察所,少年鑑別所等の関係機関の担当者に参加を呼び掛け,特定の在院者の処遇や保護関係調整等について検討・協議する「処遇ケース検討会」を開催しており,平成27年度は全国の少年院で55回実施されている(法務省矯正局の資料による。)。また,少年院に送致された者のうち,計画的かつ継続的な生活環境の調整等が特に必要と認められる者を選定し,少年院入院後早期から保護観察期間の満了に至るまで,少年院,少年鑑別所,保護観察所等の関係機関が協力して継続的に指導・支援等を行っている。さらに,特定生活指導(薬物非行防止指導及び性非行防止指導)の重点指導施設(第3編第2章第4節2項(2)ア参照)においては,指導終了後に少年鑑別所による処遇鑑別を実施し,処遇効果を検証する取組も行われている。
対象者の家族等による監督・監護の強化を目指した取組としては,少年院において,保護者等を対象として在院者が受ける矯正教育を共に体験してもらい,矯正教育に関する理解を促すとともに,在院者の有する問題を解決しようとする意欲を向上させ,在院者との相互理解を深めることなどを目的とした「保護者参加型プログラム」が実施されている。保護観察所では,保護観察に付されている少年の保護者同士が,少年の監護に関する経験,不安,悩み等を話し合ったり,保護者が専門家から子供との接し方等のアドバイスを受けたりする場として,「保護者会」を実施している(平成27年度は全国の保護観察所で44回実施。法務省保護局の資料による。)ほか,親子関係の改善を図るための小冊子「保護者のためのハンドブック〜より良い親子関係を築くために〜」を作成・配布している。
社会貢献活動については,保護観察の特別遵守事項にこれを追加する旨の法改正がされた(第2編第5章第2節2項(5)参照)ことから,今後は,多彩な活動先の確保や,個々の必要性・相当性を踏まえた実施対象者の選定,当該対象者に適合する活動の選択,効果的な実施方法について検討を重ね,より効果的な運用を図っていくこととなる。