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平成28年版 犯罪白書 第2編/第6章/第1節/1

1 国際組織犯罪対策及びテロ対策

近年,急速に複雑化・深刻化している国際組織犯罪及び多様化・複雑化する国際テロに適切に対処するためには,国際社会の一致協力した継続的取組が重要であることから,我が国も国連やサミットの場でのこれらの協議に積極的に参画している。

(1)国連における取組

国連は,平成12年(2000年),「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(国際組織犯罪防止条約)を採択した。この条約は,組織的な犯罪集団への参加,マネー・ローンダリング及び腐敗行為等の犯罪化,犯罪収益の没収,組織犯罪に係る犯罪人の引渡し及び捜査共助等について定めたものである。また,平成13年(2001年)までに,この条約を補足する「人(特に女性及び児童)の取引を防止し,抑止し及び処罰するための議定書」(人身取引議定書),「陸路,海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書」(密入国議定書)及び「銃器並びにその部品及び構成部分並びに弾薬の不正な製造及び取引の防止に関する議定書」(銃器議定書)も採択された。我が国は,この条約及びそれらの議定書を未締結であるが,人身取引議定書及び密入国議定書の締結のための国内担保法として,人身取引等に係る罰則整備等を内容とする刑法等の一部を改正する法律(平成17年法律第66号)が成立し,一部を除き,平成17年(2005年)から施行されている。

一方,従来から,国連など様々な国際機関において,テロの防止のために,テロリストを処罰するための管轄の設定等を求める国際条約が作成され,国連においては,「テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約」(平成9年(1997年)採択)などが採択されてきたが,平成11年(1999年)には,テロリストへの資金の流れを断つという目的の下に,「テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約」が採択された。

さらに,平成13年(2001年)9月11日の米国における同時多発テロ事件以降は,既存のテロ防止関連条約を改正する動きがあり,平成17年(2005年)に,国際原子力機関において,「核物質の防護に関する条約」が改正されるなどした。また,同年に,国連において,「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約」が採択されるなど,新しい条約を作成する取組も行われた。

我が国は,上記の条約を含むテロ防止対策に関する13の国際条約について締結済みである。

(2)G7/G8における取組

G7(日本,米国,英国,フランス,ドイツ,イタリア及びカナダの総称。なお,平成10年(1998年)から平成26年(2014年)までは上記7か国にロシアを加えた8か国について,「G8」と総称される。)では,昭和53年(1978年),テロ対策専門家会合(通称ローマ・グループ)が発足し,国際テロの動向等について意見交換が行われてきた。また,平成7年(1995年)のサミットにおいて,国際組織犯罪に取り組む上級専門家会合(通称リヨン・グループ)の設立が決定され,リヨン・グループでは,平成8年(1996年)に国際組織犯罪を効果的に抑止するための「国際組織犯罪と闘うための40の勧告」を発表し,その後も,銃器,薬物及び人の密輸,サイバー犯罪,マネー・ローンダリング,汚職等の腐敗行為等の国際組織犯罪に対処するための捜査手法や法制等について,議論等が行われている。平成13年(2001年)の米国における同時多発テロ事件以降は,ローマ・グループとリヨン・グループによる合同会合が開催されるようになり,平成14年(2002年)には,前記の勧告を見直し,国際組織犯罪対策に加え,テロ対策についても定めた「国際犯罪に関するG8勧告」が採択された。