性犯罪を繰り返す者の性犯罪事件の内容の推移を見るために,調査対象事件以前に2回以上の性犯罪前科のある者87人のうち,調査対象事件中の性犯罪により小児強姦型と類型化された者1人を除いた86人(以下この節において「性犯罪前科2回以上の者」という。)について,それぞれの性犯罪前科の内容に性犯罪者類型を当てはめて整理し分析を行った。なお,この項において,性犯罪前科2回以上の者に見られる特徴を事件の内容に即して詳細に見るため,強制わいせつ型に当てはまる調査対象事件中の性犯罪及び性犯罪前科については,その犯行態様が公共の乗り物内における痴漢行為であるものとそれ以外のものとに分けて類型化を行い,前者を強制わいせつ(痴漢)型,後者を強制わいせつ(その他)型とする。また,本章第3節で用いた性犯罪者類型の痴漢型は,条例違反(痴漢)型とする。
性犯罪前科2回以上の者のうち,調査対象事件中の性犯罪により単独強姦型と類型化された者19人について,その性犯罪前科の内容に性犯罪者類型を当てはめてその推移を見ると,6-4-5-6図のとおりである。この図は,縦軸を対象者,横軸を性犯罪前科の回数とし,対象者ごとに,左から順に時系列で,その者の性犯罪前科の内容に当てはまる性犯罪者類型を並べて示したものである。最も性犯罪前科が多い者(No.1)は,5回の性犯罪前科があり,その内訳は,時系列で順に,単独強姦型,小児強姦型,単独強姦型,小児強姦型,単独強姦型となっている。
19人による44件の性犯罪前科のうち19件(43.2%)が,調査対象事件中の性犯罪と同じ単独強姦型によるものであった。全ての性犯罪前科が単独強姦型である者(3人)もいれば,条例違反(痴漢)型の前科のみを有している者(2人)もいた。また,性犯罪前科に強制わいせつ(その他)型を有する者は,19人中12人(63.2%)であった。
性犯罪前科2回以上の者のうち,調査対象事件中の性犯罪により強制わいせつ(その他)型と類型化された者25人について,その性犯罪前科の内容に性犯罪者類型を当てはめてその推移を見ると,6-4-5-7図のとおりである。
25人による64件の性犯罪前科は,調査対象事件中の性犯罪と同じ強制わいせつ(その他)型が18件(28.1%),単独強姦型が21件(32.8%),条例違反(痴漢)型が24件(37.5%)とそれぞれ3割前後を占めていた。また,25人のうち性犯罪前科に単独強姦型のみを有する者が6人,条例違反(痴漢)型のみを有する者が7人,強制わいせつ(その他)型のみを有する者が3人であり,残りの9人の性犯罪前科には複数の類型が混在していた。
性犯罪前科2回以上の者のうち,調査対象事件中の性犯罪により小児わいせつ型と類型化された者13人について,その性犯罪前科の内容に性犯罪者類型を当てはめてその推移を見ると,6-4-5-8図のとおりである。13人による46件の性犯罪前科のうち28件(60.9%)が,調査対象事件中の性犯罪と同じ小児わいせつ型によるものであった。前記2類型と比較すると,複数回にわたり同一の類型に当てはまる犯行に及ぶ者が多く存在する。
性犯罪前科2回以上の者のうち,調査対象事件中の性犯罪により強制わいせつ(痴漢)型と類型化された者29人について,その性犯罪前科の内容に性犯罪者類型を当てはめてその推移を見ると,6-4-5-9図のとおりである。29人による97件の性犯罪前科のうち91件(93.8%)が,強制わいせつ(痴漢)型又は条例違反(痴漢)型で占められている。
性犯罪前科2回以上の者について,調査対象事件中の性犯罪と同一の類型の性犯罪前科(以下この節において「同型性犯罪前科」という。)の有無別構成比を類型別に見ると,6-4-5-10図のとおりである。
同型性犯罪前科のある者の割合は,調査対象事件中の性犯罪により強制わいせつ(その他)型と類型化された者で,44.0%と最も低く,次いで,単独強姦型で63.2%,小児わいせつ型で84.6%の順であった。また,6-4-5-9図を併せて見ると,調査対象事件中の性犯罪により強制わいせつ(痴漢)型と類型化された者の性犯罪前科は,強制わいせつ(痴漢)型又は条例違反(痴漢)型で大半が占められており,29人全員に同型性犯罪前科があった。