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平成27年版 犯罪白書 第3編/第2章/第4節/2

2 少年院における処遇

少年院における在院者の処遇に関しては,これまで,昭和23年に制定された旧少年院法に基づいて行われてきたが,平成26年6月に新たな少年院法が制定され,従来の年齢区分を撤廃するなど少年院の種類の見直しが図られるとともに,新たに矯正教育課程が整備された(27年6月1日施行)。

(1)少年院の種類及び矯正教育課程
ア 少年院の種類

3-2-4-8表は,旧少年院法に基づいた平成26年における少年院の種類別・処遇区分別の少年院入院者の人員を見たものである。

3-2-4-8表 少年院入院者の人員(少年院の種類別,処遇区分別)
3-2-4-8表 少年院入院者の人員(少年院の種類別,処遇区分別)
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少年院の種類としては,従来,初等少年院,中等少年院,特別少年院及び医療少年院の4種類が定められていたが,新たな少年院法の施行に伴い,少年院の種類が整理され,現在,少年院には,次の<1>から<4>までの種類があり,それぞれ,入院時の少年の年齢,犯罪的傾向の程度及び心身の状況等に応じて,以下の者を収容している。

<1> 第1種   保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満のもの(<2>に定める者を除く。)
<2> 第2種   保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだ,おおむね16歳以上23歳未満のもの
<3> 第3種   保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満のもの
<4> 第4種   少年院において刑の執行を受ける者

イ 矯正教育課程

少年院における処遇は,これまで,一般短期処遇,特修短期処遇及び長期処遇の「処遇区分」に分けられ,一般短期処遇と長期処遇については,「処遇課程」が設けられていたが(CD-ROM資料3-14参照),新たな少年院法の施行に伴い,在院者の特性に応じて計画的・体系的・組織的な矯正教育を実施するため,従来の処遇区分等に代えて,新たに矯正教育課程が定められた。矯正教育課程は,在院者の年齢,心身の障害の状況及び犯罪的傾向の程度,在院者が社会生活に適応するために必要な能力その他の事情に照らして一定の共通する特性を有する在院者の類型ごとに,その類型に該当する在院者に対して行う矯正教育の重点的な内容及び標準的な期間を定めたものである。

少年院の種類ごとに指定された矯正教育課程は,3-2-4-9表のとおりである。

3-2-4-9表 少年院における矯正教育課程
3-2-4-9表 少年院における矯正教育課程

少年院の種類は,家庭裁判所が少年院送致決定に際し指定する。少年鑑別所の長は,各少年院に指定された矯正教育課程を考慮して,収容する少年院を指定する。少年院の長は,家庭裁判所及び少年鑑別所の意見を踏まえ,在院者の矯正教育課程を指定する。なお,家庭裁判所が,少年院送致決定に際し,第1種少年院を指定する場合において,矯正教育の期間として短期間が適当であると認め,その旨の勧告を行ったときには,少年院は短期義務教育課程又は短期社会適応課程を指定するものとしている。

(2)矯正教育

少年院における処遇の中核となるのは矯正教育であり,在院者には,生活指導,職業指導,教科指導,体育指導及び特別活動指導の五つの分野にわたって指導が行われる。少年院の長は,個々の在院者の特性に応じて行うべき矯正教育の目標,内容,方法及び期間等を定めた個人別矯正教育計画を作成し,矯正教育はこれに基づき実施される。

少年院における処遇の段階は,その者の改善更生の状況に応じた矯正教育その他の処遇を行うため,1級,2級及び3級に区分されており,在院者は,まず3級に編入され,その後,改善更生の状況等に応じて,上位の段階に移行し,これに応じて,その在院者にふさわしい処遇が行われる。

前記の五つの分野における指導の主な内容は,以下のとおりである。

ア 生活指導

生活指導では,<1>基本的生活訓練,<2>問題行動指導,<3>治療的指導,<4>被害者心情理解指導,<5>保護関係調整指導,<6>進路指導について,全体講義,面接指導,作文指導,日記指導,グループワーク等の方法を用いて,教育が行われている。

また,個々の在院者の問題性又は事情に応じ,特定生活指導として,<1>被害者の視点を取り入れた教育,<2>薬物非行防止指導,<3>性非行防止指導,<4>暴力防止指導,<5>家族関係指導,<6>交友関係指導を行っている。それぞれの指導は,グループワーク,集団指導又は個別指導の形式で行われる。

これらのうち,薬物非行問題に係る指導については,平成23年度に「矯正教育プログラム(薬物非行)」(少年院法施行前の名称)が開発され,24年度から重点指導施設として4庁の少年院(27年度は11庁に拡大)において,また,性非行問題に係る指導については,24年度に「矯正教育プログラム(性非行)」(少年院法施行前の名称)が開発され,25年度から重点指導施設として2庁の少年院において,それぞれ集中的かつ重点的な指導が実施されていたが,現在は,他の少年院においても,これらの指導が実施されている。

イ 職業指導

職業指導においては,新たな少年院法の施行に伴い,<1>就業に必要な専門的知識及び技能の習得を目的とした職業能力開発指導,<2>職業生活における自立を図るための知識及び技能の習得並びに情緒の安定を目的とした自立援助的職業指導に加えて,<3>有為な職業人としての一般的な知識及び態度並びに職業選択能力及び職場適応能力の習得を目的とした職業生活設計指導が実施されることとなった。平成27年6月以降,職業能力開発指導において実施している種目は,電気工事科,自動車整備科,給排水設備科,情報処理科,介護福祉科,溶接科,土木・建築科,クリーニング科である。

平成26年における出院者のうち,在院中に,個別に指定された職業補導の種目に関連して資格・免許を取得した者は49.1%,それ以外で資格・免許を取得した者は49.5%であり,その取得者の資格・免許種目別構成比は,3-2-4-10図のとおりである。

3-2-4-10図 少年院出院者の取得資格・免許種目別構成比
3-2-4-10図 少年院出院者の取得資格・免許種目別構成比
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ウ 教科指導

少年院では,義務教育未終了者及び社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる在院者に対しては,小学校又は中学校の学習指導要領に準拠した教科指導を行う。そのほか,高等学校,大学等への復学若しくは進学又は就労のために高度な学力を身に付けることが必要な者に対しては,その学力に応じた教科指導を行うことができる。平成26年における出院者のうち,中学校又は高等学校への復学が決定した者は,それぞれ127人,112人であり,在院中に中学校の修了証明書を授与された者は,255人であった(矯正統計年報による。)。なお,19年度から,法務省と文部科学省の連携により,少年院内において,高等学校卒業程度認定試験を実施しており,26年度の受験者数は509人,合格者数は,高卒認定合格者が158人,一部科目合格者が321人であった(文部科学省生涯学習政策局の資料による。)。

エ 体育指導

善良な社会の一員として自立した生活を営むための基礎となる健全な心身を培わせるため必要な体育指導を行っている。体育指導においては,各種スポーツ種目等を通じて,日常生活に必要な体力や技能を高めることのみならず,遵法の精神や協調性を育むような指導に留意している。

オ 特別活動指導

在院者の情操を豊かにし,自主,自律及び協同の精神を養うため,<1>自主的活動,<2>クラブ活動,<3>情操的活動,<4>行事,<5>社会貢献活動といった特別活動指導が行われている。

このうち,自主的活動としては,在院者に日直,図書係,整備係,レクリエーション係等の役割を担当させ(役割活動),自主性,協調性等を涵(かん)養しているほか,集会,ホームルーム,機関誌の作成等も行われている。社会貢献活動としては,福祉施設でのボランティア活動や近隣の公園・公共施設等の清掃・美化活動等を実施している施設が多い。

(3)保護者に対する協力の求め等

在院者の改善更生を図る上で,保護者の果たす役割は大きく,少年院においては,矯正教育に関する情報の提供や講習会等を実施して保護者の協力を得るようにしているほか,在院者の非行に関わる問題等に適切に対処できるよう指導・助言を行っている。

(4)関係機関等に対する協力の求め等

少年院では,篤志面接委員,教誨師,更生保護女性会員,BBS会員等,社会の広範な各層の人々が民間の篤志家として支援活動を行っている(第2編第4章第3節3項及び第5章第5節4項参照)。

篤志面接委員は,在院者に対し,精神的悩みについての相談・助言,教養指導等を行っており,平成26年末現在,556人を少年院の篤志面接委員として委嘱している(法務省矯正局の資料による。)。

教誨師は,在院者の希望に応じて宗教教誨を行っており,平成26年末現在,374人を少年院の教誨師として依頼している(法務省矯正局の資料による。)。

更生保護女性会員,BBS会員等は,定期的に少年院を訪問し,在院者と一緒に,誕生会,観桜会,成人式等の施設行事に参加したり,ゲームやスポーツを楽しんだり,在院者の意見発表会の審査員を務めるなど,様々な形で少年院の処遇を支援しており,これらの人々との触れ合いは,在院者にとって,更生に向けた大きな励みとなっている。

(5)社会復帰支援

少年院は,これまでも関係機関と連携を図りつつ,在院者の円滑な社会復帰を図るための支援を実施してきたが,新たな少年院法により,出院後に自立した生活を営む上での困難を有する在院者に対しては,その意向を尊重しつつ,適切な帰住先を確保すること,医療及び療養を受けることを助けること,修学又は就業を助けることなどの社会復帰支援を行い,その際には,保護観察所との連携を図るよう努めることが明確化された。

また,法務省では,平成18年度から,厚生労働省と連携し,刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施しているが,少年院でも,その一環として,在院者に対して,公共職業安定所の職員による職業相談等を実施している(第2編第4章第2節4項及び本章第5節2項(5)参照)。

さらに,平成21年度からは,厚生労働省と連携し,障害を有し,かつ,適当な帰住先がない在院者に対して,出院後速やかに福祉サービスを受けることができるようにするための特別調整を実施している(第2編第4章第2節5項及び第5章第1節2項参照)。