この章では,主要な犯罪並びにそのうちの殺人及び窃盗について,我が国の認知件数,発生率及び検挙率の推移を,入手し得た公表されている公的資料の範囲内で,フランス,ドイツ,英国(イングランド及びウェールズに限る。以下この章において同じ。)及び米国の4か国と対比して見る。
なお,この章において,「主要な犯罪」とは,以下のものをいう。
日本:一般刑法犯
フランス:交通犯罪等を除く重罪及び軽罪(crime et délit)(参考値)
ドイツ:交通犯罪等を除く重罪及び軽罪(Straftat)
英国:報告犯罪(notifiable offence:内務省が警察から報告を受けた犯罪)(参考値)
米国:暴力犯罪及び財産犯罪(violent crime and property crime)(推定値)
我が国と前記4か国との間では,犯罪とされるものの範囲や犯罪の構成要件(ある行為がある犯罪に該当すると判断される要素や条件)が異なるほか,統計の取り方も同一ではない。また,特定の犯罪の認知件数等のみにより,犯罪動向を即断することも適当であるとはいえない。さらに,確認することのできた範囲では,フランス及び英国において公表されている統計資料等において,統計の集計項目等の変動が見られ,それぞれの国の過去の公表数値とも継続性がない旨の留保がなされている。これらのことを前提に,我が国と前記4か国の統計数値は,あくまで概括的な把握としての比較である点に留意されたい。