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平成26年版 犯罪白書 第6編/第4章/第1節

第1節 調査の概要

今回,法務総合研究所では,窃盗事犯者について,犯罪傾向が比較的進んでいない者に対する再犯防止対策が特に重要であることを考慮し,罰金刑に処せられた者や特定の手口による前科のない窃盗事犯者に焦点を当てて,その実態,特性,処分後の成り行き等を明らかにし,その者の社会復帰を含む効果的な再犯防止対策の検討に役立てることを目的として,特別調査を実施した。

特別調査では,全国を調査対象として,刑事確定記録の保存期間等を考慮し,平成23年6月中に窃盗(既遂・未遂を問わず,また常習特殊窃盗若しくは常習累犯窃盗又はこれらの幇助罪・教唆罪を含む。以下同じ。)により有罪判決(略式命令を含む。以下同じ。)が確定した者を対象とした。ただし,判決の認定罪名の中に,殺人,傷害致死,強盗,強姦又は放火が含まれている者については,比較的長期の実刑に処せられている可能性が高く,犯罪傾向が比較的進んでいない者を中心とした窃盗事犯者の再犯状況を分析する上では同一の調査対象に含めることは適当ではないと判断し,今回の特別調査の対象者からは除外した。

その結果,特別調査における調査対象者の実人員は2,421人(以下「全対象者」という。)であり,この全対象者に関して,平成23年6月中に有罪判決の確定した事件(以下「調査対象事件」という。)について,裁判書等の資料に基づき,対象者の基本的属性や調査対象事件の概要及び裁判内容等のほか,再犯の有無に関する調査を実施した(以下「全対象者調査」という。)。なお,全対象者のうち4人については,裁判確定前の余罪につき刑の同時言渡しの裁判があったが,特別調査における分析に当たっては,当該余罪については分析対象から除外することとした。全対象者調査の結果については,第2節で紹介する。

また,全対象者のうち,調査対象事件について罰金に処せられた者(以下「罰金処分者」という。)に関しては,その実態を明らかにするため,前記の調査に加えて,刑事確定記録等を用いて,罰金処分者の属性や生活環境,犯行の詳細等のほか,再犯の有無・内容等の詳細に関する調査を実施した。この調査結果については,第3節で紹介する。

さらに,調査対象事件のうち,主たる犯行(調査対象者に複数の窃盗事件がある場合には,被害額の最も多額な犯行をいう。以下この章において同じ。)に関し,その手口が万引きであった者(万引き事犯者)又は侵入窃盗であった者(侵入窃盗事犯者)については,これらの手口による窃盗事犯者の再犯率が高いとの指摘があることを考慮し,前科のない者について,罰金処分者と同様に刑事確定記録等を用いた調査を実施し,その実態を明らかにするとともに,再犯要因の分析を試みた。この調査結果については,第4節及び第5節で紹介する。