検察においては,罪を犯した者の円滑な社会復帰や再犯防止の観点から,各地の実情に応じ,被疑者又は被告人のそれぞれの事情等を踏まえつつ,保護観察所,地方公共団体,関係する福祉機関等と連携しながら,釈放後の帰住先の確保や福祉サービスの受給につなげたり,事案によっては被告人に対して保護観察付執行猶予の求刑を行うなどしており,庁の実情に応じ,刑事政策的取組を専門に行う部署を設けたり,社会福祉士を採用して同部署に配置し,その専門的知見を活用するなどしている。これらは,窃盗事犯者に対する特有の対応策ではないが,例年,一般刑法犯における検察庁新規受理人員の5割前後を占める窃盗事犯者の中には,こうした取組の対象となる者も少なからず存在するものと思われる。
以下,具体例を紹介する。なお,事例の内容は,個人の特定ができないようにする限度で修正を加えている。
A県においても,近年,高齢者による万引きが増加傾向にあるが,高齢のB子は,70歳を超えて万引きによって複数回検挙され,今回,検察庁に在宅のまま送致された。B子は,これまで前科がなく,被害弁償も済み,被害関係者も被疑者の処罰までは求めていなかったが,要介護認定を受けていた上,家族の指導監督能力が十分とは言い難く,社会内での改善更生や再犯防止の観点から問題があった。そこで,担当検察官は,B子を起訴猶予処分とするに当たり,庁内に設置された刑事政策的取組を専門に扱う部署に相談し,同部署に配置された社会福祉士等のサポートの下,地方公共団体の所管課と連携して,B子を地域包括支援センターによる生活支援に橋渡しした。