前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

平成26年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/2

2 鑑別業務
(1)収容鑑別

家庭裁判所で観護措置(少年鑑別所送致)の決定がなされた少年に対して行う鑑別(収容鑑別)の標準的な流れは,3-2-3-5図のとおりである。少年鑑別所では,鑑別面接,心理検査,行動観察,医学的診断の結果に,外部から得られた情報を加えて検討し,在宅保護(保護観察等),収容保護(少年院送致等)等の意見(鑑別判定)を決定している。鑑別判定の結果は,少年の資質の特徴,非行要因,改善更生のための処遇指針等と共に鑑別結果通知書に記載されて家庭裁判所に送付され,審判の資料となる。保護処分が決定された場合には,少年院,保護観察所に送付され,処遇の参考に供される。

また,法務省矯正局では,「再犯防止に向けた総合対策」の一環として,少年の再非行防止に資するための調査ツールである法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)を開発し,平成25年度から少年鑑別所において運用を開始している。MJCAは,心理学,犯罪学等の人間科学の知見を踏まえて,少年鑑別所に入所した少年の実証データに基づき,統計学的な分析を経て開発したもので,少年の再非行の可能性等を把握するとともに,保護者との関係性の調整や社会適応力の向上等,何を目標として働き掛けをすれば再非行を防止できるのかを明らかにしようとするものである。

3-2-3-5図 少年鑑別所における収容鑑別の流れ
3-2-3-5図 少年鑑別所における収容鑑別の流れ

3-2-3-6表は,平成25年に鑑別判定を終了した少年(観護措置に付された者に限り,25年に退所した者を計上している。)について,鑑別判定と審判における決定等との関係を見たものである。

3-2-3-6表 審判における決定等(鑑別判定区分別)
3-2-3-6表 審判における決定等(鑑別判定区分別)
Excel形式のファイルはこちら
(2)収容鑑別以外の鑑別
ア 家庭裁判所からの請求による在宅鑑別

家庭裁判所が関与する鑑別では,収容鑑別が大多数を占めるが,少年を収容することなく,家庭裁判所,少年鑑別所等に来所させて行う在宅鑑別もある。平成25年における在宅鑑別の受付人員は,381人であった(矯正統計年報による。)。

イ 法務省関係機関からの依頼鑑別

平成25年における法務省関係機関からの依頼鑑別の受付人員の内訳は,検察庁が16人,少年院又は刑事施設が3,654人,地方更生保護委員会又は保護観察所が5,426人であった(矯正統計年報による。)。

なお,依頼鑑別の内容は,対象者の資質鑑別,個別式又は集団式の心理テストの実施,処遇計画の策定・変更に資する面接・調査の実施等である。

ウ 一般少年鑑別等

一般市民,公私の団体等からの依頼を受けて行う鑑別であり,その内容は,非行のほか,性格,しつけ,生徒指導等多岐にわたっている。また,少年鑑別所は,「子ども・若者育成支援推進法」(平成21年法律第71号)に基づき,地域の子ども・若者育成支援に携わる関係機関とのネットワークに参画するなど,心理学等の専門的知識・技能等を地域社会に積極的に提供するよう努めている。今後は,平成26年6月に成立した少年鑑別所法における,地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助業務として,更に充実を図ることとしている。