裁判員制度は,広く国民が刑事裁判の過程に参加し,裁判の内容に国民の健全な社会常識がより反映されるようになることによって,司法に対する国民の理解と支持が深まり,長期的に見て,司法がより強固な国民的基盤を得ることを目指し,裁判員法により創設され,平成21年5月21日から実施されている制度である。
裁判員裁判の対象事件は,死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件及び法定合議事件(死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪(強盗等を除く。))であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件である。ただし,被告人の言動等により,裁判員やその親族等に危害が加えられるなどのおそれがあって,そのために裁判員等が畏怖し裁判員の職務の遂行ができないなどと認められる場合には,裁判所の決定によって対象事件から除外される(平成25年において,同決定がなされた終局人員は2人であった。最高裁判所事務総局の資料による。)。なお,対象事件に該当しない事件であっても,対象事件と併合された事件は,裁判員裁判により審理される。
平成21年から25年までの裁判員裁判対象事件(裁判員裁判の対象事件及びこれと併合された事件)の第一審における新規受理・終局処理(移送等を含む。以下この節において同じ。)人員を罪名別に見ると,2-3-4-1表のとおりである。25年の新規受理人員は,強盗致傷(340人)が最も多く,次いで,殺人(自殺関与及び同意殺人を除く。303人),現住建造物等放火(141人),傷害致死(136人),強制わいせつ致死傷(135人),強姦致死傷(130人)の順であった。
平成25年に第一審で終局判決に至った裁判員裁判対象事件について,開廷回数別構成比及び審理期間(新規受理から終局判決までの期間)別構成比を見ると,2-3-4-2図のとおりである。開廷回数は,大多数が5回以下であり,3回以下は36.0%を占め,平均は,4.5回であった。また,審理期間は,6月以内のものは38.4%であり,平均で8.9月であった。そのうち,公判前整理手続に付された事件(起訴後の罰条変更等により裁判員裁判対象事件となったため,公判前整理手続に付されなかったものを除く。)における公判前整理手続期日の回数は,3回以下が33.6%,4回以上6回以下が40.4%,7回以上が26.1%であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。
2-3-4-3表は,平成25年に第一審で終局判決に至った裁判員裁判対象事件について,罪名ごとにその有罪・無罪の別及び有罪人員の科刑状況を見たものである。
平成25年において,裁判員裁判による終局判決に対する控訴事件の終局人員は455人であり,そのうち控訴棄却は387人と最も多かった。そのほか,控訴取下げが35人,破棄自判が28人(自判内容はいずれも有罪),破棄差戻し・同移送3人,公訴棄却2人であった(司法統計年報による。)。
平成25年において,裁判員裁判による終局判決に対する上告事件の終局人員は204人であり,その内訳は,上告棄却が176人,上告取下げが28人であった(司法統計年報による。)。