我が国に在留する外国人が増加する中で,特定の地方公共団体や地域,特に,静岡県浜松市,愛知県豊田市・豊橋市,群馬県太田市・邑楽郡大泉町といった,東海地方や北関東地方の製造産業等を中核とする地方工業都市を中心に,外国人が多く住む集住都市が現れ,コミュニティを形成していくという現象が生じた。そのため,定住外国人が集住する地方公共団体では,いわば必要に迫られる形で,国に先行して,定住外国人を住民の一員として地域社会に受け入れるための施策を講じてきた。その中で,ニューカマーと呼ばれる南米日系人を中心とする外国人住民が多数居住する都市等を中心に,市町レベルからなる「外国人集住都市会議」や県レベルからなる「多文化共生推進協議会」が組織され,各都市等が連携して多文化共生に向けた取組を進めてきた。これらの組織は,政府に対し,例えば,外国人に対する雇用,外国人児童・生徒に対する教育,外国人住民を含めた防災等に関する要望や提言を行ってきた。
これらの動きを契機に,平成17年頃から,政府も多文化共生という視点から施策の検討をするに至り,その後,23年には,政府として取り組み又は検討する施策として,教育,雇用,住宅,社会保障,防災・防犯等の諸分野にわたる「日系定住外国人施策に関する行動計画」が取りまとめられた。24年8月には,関係省庁からなる「外国人との共生社会」実現検討会議において「外国人との共生社会の実現に向けて(中間的整理)」が取りまとめられ,政府は,日本語習得,子どもの教育,雇用・労働環境,社会保障,情報提供,住居の安定確保,治安問題への対応,在留期間の適正な運用等に関し,地方公共団体及び民間団体等との連携を図りながら,環境整備を推進していくこととされた。