昭和58年(1983年),欧州評議会において,外国人受刑者を母国に移送して母国で服役させる制度の創設を内容とする刑を言い渡された者の移送に関する条約が作成され,我が国は,平成15年(2003年),この条約に加入した。我が国は,同条約未加入国との間では,刑を言い渡された者の移送及び刑の執行における協力に関する日本国とタイ王国との間の条約を締結(平成22年(2010年)発効)した。
我が国では,前記の各受刑者移送条約に基づき,その国内担保法である国際受刑者移送法(平成14年法律第66号)が定める要件及び手続に従って,これら条約の締約国との間で受刑者の移送をすることができる。受刑者の移送には,一定の要件の下,条約締約国で刑の言渡しを受け拘禁されている日本人受刑者を我が国に移送する「受入移送」と,我が国で刑の言渡しを受け拘禁されている外国人受刑者をその母国である条約締約国に移送する「送出移送」があり,受入移送,送出移送のいずれにおいても,当該受刑者の同意がないときには移送ができない。
受刑者移送制度は,外国において刑の言渡しを受けその国の刑務所等で拘禁されている受刑者をその母国等に移送し,その国で刑の執行を行うことにより,受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰並びに刑事司法分野の一層の国際協力を図ろうとする制度であるが,国際受刑者移送法上,条約締約国以外の国等との間で移送ができない。そのため,我が国の来日外国人受刑者の約6割を合計で占める中国,ブラジル及びイラン国籍の者については,これらの国と我が国との間で受刑者移送条約が締結されておらず,移送の対象とならない。
受刑者送出移送人員の推移(平成16年以降)及び24年における我が国からの受刑者送出移送人員(執行国別・罪名別)は,7-4-2-8図のとおりである。なお,同年までの我が国への受入移送は合計2人である(24年はいなかった。法務省矯正局の資料による。)。