これまでに毎年の犯罪白書が指摘しているように，昭和三〇年以来刑法犯少年の数は累年増加傾向にあり，憂慮される。昭和三九年の刑法犯少年検挙人員数は一九〇，四四二人であり，その一四才以上二〇才未満の少年人口一，〇〇〇人に対する割合(人口比)は一五・二であるが，昭和三八年の刑法犯少年検挙人員数は一七四，三五一人，人口比は一四・二であったから，昭和三九年には検挙人員数で一六，〇九一人，人口比において一の増加となっている。最近一〇年間の刑法犯少年検挙人員数の推移を，成人刑法犯検挙人員数の推移と対比してみると，III-1表のとおりである。

III-1表　少年，成人別刑法犯検挙人員の推移(昭和30〜39年)

　上の表でみると，昭和三〇年には刑法犯少年検挙人員数は九六，九五六人であり，一四才以上二〇才未満の少年人口一，〇〇〇人に対する割合は九・二であったところ，その後，毎年増加傾向をたどり，昭和三六年，三七年頃には一時停滞したかにみえたが，必ずしもそうではなく，昭和三〇年を基点(すなわち一〇〇)とした人口比による増加指数を計算すると，昭和三九年には一六五となっている。
　これに対して，成人の刑法犯検挙人員は，昭和三〇年以降おおむね安定しており，二〇才以上の人口一，〇〇〇人に対する割合をみても，昭和三〇年から三七年までは僅かすつではあるが減少傾向にあり，昭和三八年，三九年にはやや上昇の傾向を示しているようであるが，なお昭和三〇年を基点(一〇〇)として人口比による指数を計算すると，昭和三九年は九二となり，依然として昭和三〇年を下回っている。
　右に述べた少年および成人各刑法犯検挙人員の人口比の推移を昭和三〇年を基点とした指数に基づいて図示するとIII-1図のとおりである。

III-1図　少年，人別刑法犯検挙人員の人口比の推移(昭和30〜39年)

　つぎに，右III-1表の示す全刑法犯検挙人員中少年刑法犯検挙人員のしめる割合について説明すると，昭和三〇年には一八・二％であったが，昭和三八年には二八・七％にまで上昇している。これは年々刑法犯検挙人員が増加しているが，成人に比して少年刑法犯の増加の勢が大きいため，少年刑法犯検挙人員のしめる割合が上昇したのである。しかし，昭和三九年には，成人刑法犯の検挙人員も上昇してきたために，全刑法犯検挙人員中にしめる少年刑法犯検挙人員の割合は昭和三八年に比較して僅かに減少した。