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 昭和40年版 犯罪白書 第一編/第二章/七/2 

2 通常第一審有罪人員からみた前科者および刑法上の累犯者

 通常第一審有罪人員のうちで前科者(懲役,禁錮または罰金に処せられた後,刑法第三四条の二の期間が経過していない者をいう。以下同じ)の占める割合を刑法犯についてみると,I-66表のとおりである。すなわち,昭和一〇年以降昭和二四年まではおおむね三五%から三八%の間を上下していたのが前科者の比率である。しかるに,この比率は,昭和二五年以降有罪人員数が減少傾向をみせているにもかかわらず,逐年上昇傾向を示し,昭和二九年には五〇・四%と有罪人員の半数をこえるに至り,さらにその後もゆるやかな上昇カーブを示して,昭和三八年には五九・五%に達している。以上は罰金以上の刑に処せられ,刑法第三四条の二の期間(禁錮以上の刑は一〇年,罰金は五年)を経過せず,刑の言渡しの効力が消滅していない者についてみたのであるが,かように前科者の割合が増加しているのはいかなる事由によるものであろうか。この点を明らかにするため,まず刑法犯通常第一審有罪人員のうち,前科者の前科総数の内訳について昭和二五年以降の推移をみると,I-67表のとおりである。この表によると,昭和二五年においては,前科者の前科総数のうち懲役および禁錮が七六・二%を占め,罰金は二三・八%にすぎなかったのに,昭和二七年以降罰金前科の数およびその総数のうちにおける割合は年とともに増加し,昭和三七年においては,懲役および禁錮は前科総数の五七・二%と減少しているのに対し,罰金は四二・八%を占めるに至っていることがわかる。この増減の状況をさらに明らかにするため,通常第一審有罪人員総数とそのうちにおける前科者数および前科者の前科総数の内訳について,昭和二七年の数をそれぞれ一〇〇とし,同年以降の推移をみると,I-68表のとおりでる。この表によれば,前科者の前科のうち,懲役および禁錮の指数は,毎年有罪人員総数の指数とほぼ同様かまたはこれを下廻る数字を示しているのに対し,罰金の指数は,例年有罪人員総数の指数を上廻り,かつ累年大幅に増加していることを示しており,以上を総合すると,通常第一審有罪人員総数のうちにおいて前科者の割合が増えているのは,罰金の前科ある者の増加によるものであることが明らかであろう。ところで,前科者の前科につきいかなる犯罪により刑罰に処せられたものであるかは統計に示されていないが,近年道交違反により罰金に処せられる者が激増している実情に鑑みると,罰金前科者の増加は,主として道交違反により罰金刑を受けた者の増加によるものではないかと思われる。

I-66表 刑法犯通常第一審有罪人員中の初犯者・前科者別の人員と率(昭和10〜38年)

I-67表 刑法犯通常第一審有罪人員中における前科者の前科総数の内訳

I-68表 刑法犯通常第一審有罪人員中における前科者およびその前科総数の内訳の推移(昭和27年を100とした指数)

 次に,刑法犯の通常第一審有罪人員を刑法上の累犯者とそうでない者とに分けて,みると,I-5図に示すように,累犯者の数は昭和二七年から昭和三四年までの間は,二万四千人ないし二万七千人台を上下してほぼ一定の水準を保っていたが,昭和三五年以降減少の傾向にある。昭和三八年の累犯者の数は,一七,八六三人で,有罪人員に対する比率は,二五・三%である。

I-5図

 なお,常習犯罪関係の有罪統計としては,常習強窃盗および常習賭博に関するものがあるので,最近五年間の統計をみると,I-69表のとおりで,顕著な動きはみられない。しかし,これがこの種犯罪の実相とは考えられないので,なお詳細な検討が必要であろう。

I-69表 常習賭博・常習累犯窃盗・常習累犯強盗等の一審有罪人員(昭和33〜37年)