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 昭和40年版 犯罪白書 第一編/第二章/三/1 

三 公務員犯罪

1 公務員犯罪の概況

 公務員犯罪は公務員の職務に関して行なわれるもの(たとえば収賄)と,その職務に関係なく行なわれるものとに大別されるが,ここで公務員犯罪とは,この両者を含めたところの公務員によるすべての犯罪を意味する。
 ところで,最近公務員犯罪は漸増の傾向にあるといわれているが,公務員で検挙されたものの数を刑法犯と特別法犯に区分してみると,I-44表のとおりである。

I-44表 公務員検挙人員累年比較(昭和34〜38年)

 すなわち,刑法犯も特別法犯も昭和三四年以降逐年増加し,なかでも特別法犯の増加が目立つが,特別法犯の九六%までは交通関係法令違反となっている。これを罪名別にみると,I-45表のとおりで,窃盗,収賄,詐欺,横領の順に多くなっており,公務員の窃盗が年々増加し,横領および業務上横領が昭和三六年以後減少傾向にあるのが注目される。

I-45表 罪名別公務員犯罪検挙人員(昭和34〜38年)

 なお,公務員犯罪は警察からの送致事件以外に,検察官が直接認知した事件および検察官に直接告訴または告発した事件が比較的に多いので,検察庁の処理統計によってその推移をみておく必要がある。すなわちI-46表によると,昭和三九年の処理人員で最も多いのは収賄であり,職権濫用がこれに次ぎ,窃盗,横領,詐欺,偽造の順となっている。また,起訴率が最も高いのは収賄で,最も低いのが職権濫用となっているが,職権濫用の起訴率がきわめて低いのは,この種の事件の大部分は警察・検察庁・裁判所・矯正施設などの職員に対する告訴・告発事件であるが,証拠不十分のものが多いためである。なお,昭和二三年から三六年までの収賄の平均起訴率は四二・七%であったが(昭和三八年版犯罪白書六四頁参照),その後それは,三七年には四三・一%,三八年には四四・三%,三九年には五四・一%というように,逐年高くなっている。

I-46表 公務員犯罪主要罪名別起訴人員の推移(昭和34〜39年)