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6 その他の刑法犯 本項では放火,略取・誘かい,とばくの三者をその他の刑法犯としてとり上げることとする。放火と略取・誘かいは,その数は比較的少ないが,きわめて重大な犯罪であり,とばくは最近とみに増加傾向を示しているという点で,いずれも多少の説明を要するものと考えられるからである。なお,その他の刑法犯としては,以上三者のほか贈収賄をあげねばならないが,これは第二章の三「公務員犯罪」の項においてとり上げることにして,本項では省略する。
I-23表は,検挙人員の推移をみたものであるが,まず放火についてみると,昭和三五年から三七年まで漸減傾向にあったのが三八年に一時増加し,昨三九年には再び減少している。しかし,これらの動きは比較的緩慢である。 I-23表 放火等の検挙人員の推移(昭和34〜39年) 次に,略取・誘かいであるが,その数は必ずしも多くはないが,悪質重大な犯罪であり,連鎖反応的に発生するおそれがあるので注意を要する。I-23表によってわかるとおり,この種事件の検挙人員は,昭和三四年以後順次増加し,昭和三八年には二九五人に達したのであるが,昭和三九年には少しく減少している。そして,この減少は発生件数においても同様である。昨年,刑法の一部を改正する法律(昭和三九年法律第一二四号)によって,身のしろ金目的の略取・誘かい罪が加重類型として新設されたが,この改正の予防的効果については,今後の検討にまたなければならない。とばく罪は,昭和二二年に戦後最高の検挙人員(八三,二〇七人)を算して以後,昭和三四年まで逐年例外なく減少していたが,翌三五年から再び増加傾向を示し,昭和三九年には三四年の二倍以上を算するにいたった。とばく罪は,暴力団関係の犯情の重いものから,通常の勝負事に関係して行なわれる軽微なものまで多種多様であるが,とばく罪の検挙人員のなかで暴力団員の占める割合についてみると,I-24表のとおりである。この表によると,実数も比率もともに増加傾向にあり,とくに昨三九年の増加はいちぢるしく,検挙人員の三分の一は暴力団関係者で含めているという状況にある。とばく罪はきわめて暗数の多い犯罪であることを考えると,このような検挙人員の増加は警察の暴力団対策の強化によるものといってよいであろう。 I-24表 とばく罪検挙人員中暴力団関係者の占める割合(昭和34〜39年) |