最近の我が国の犯罪情勢を見ると,刑法犯の認知件数が平成14年をピークに減少傾向にあるなど,一定の改善を見せているものの,戦後を通じて見ればなお相当高い水準にある。その中で,平成19年版犯罪白書では,昭和23年以降の犯歴100万人を対象とした調査の結果,約3割の再犯者によって,約6割の犯罪が行われていることを明らかにした。さらに,一般刑法犯検挙人員に占める再犯者の比率及び刑務所への入所受刑者人員に占める再入者の比率がいずれも近年において上昇傾向にあるなどといった情勢を踏まえ,再犯防止対策は,我が国刑事政策上の最重要課題と位置付けられている。平成24年7月には,犯罪対策閣僚会議がそれまでの取組を踏まえて,「再犯防止に向けた総合対策」を策定し,刑務所出所者等の出所等年を含む2年間における刑務所等に再入所等する者の割合を,過去5年における平均値を基準として,33年までに20%以上減少させるという数値目標が設定されるなど,再犯防止対策の着実な推進に向けた取組が加速している。同対策における重点施策の一角をなす刑務所出所者等の就労や住居の確保,福祉等による支援といった生活基盤の確立に向けた様々な取組は,官民相互の連携・協力の下に充実・強化されてきている。
本編では,刑務所出所者等の再犯を防止し,社会復帰を図る各種施策の運用や官民協働による取組の現状と課題を,就労や住居の確保等に重点を置いて紹介するとともに,刑務所出所者等に必要な支援内容を,各種施策の成果や近年の犯罪白書で明らかにしてきた再犯リスク要因を踏まえた上で,保護司及び受刑者・在院者の意識調査を通じて検討・分析することを試みた。
ここで,本特集を結ぶに当たり,その内容を総括するとともに,これからの刑務所出所者等の社会復帰支援の在り方について,進むべき方向を探ることとする。