経済・社会が国際的な結び付きを強め,人,物,金,情報等の国際的流動が活発になる中で,国際的な犯罪への対策が重要となり,以下のとおり,国際連合(以下「国連」という。)や先進国首脳会議(サミット)を含む各種の国際会議等において,刑事司法の制度・運用面での協調が進められてきた。
2010年4月には,ブラジル・サルバドールで,刑事司法の各領域にわたる政策の提案,意見交換のために国連の主催で1955年から5年ごとに開催されてきた国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)の第12回会議が開催され,「サルバドール宣言」を採択し,犯罪予防・刑事司法の多様な分野における国際協力の重要性が強調されるとともに,各国に対し,組織犯罪,テロ,腐敗,経済・ID犯罪(クレジットカード詐欺,偽変造旅券行使等のID(個人識別情報)の悪用に係る犯罪),環境犯罪等への対策の強化が提起された。また,国連経済社会理事会の下に国連における刑事司法分野の政策決定に携わる機能委員会として設置されている犯罪防止刑事司法委員会(コミッション)は,毎年開催されているが,我が国は設立当初から同委員会の構成国に選出されており,2011年4月に開催された第20会期会合においても積極的に関与した。