前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択

平成22年版 犯罪白書 第7編/第1章/第2節

第2節 検察・裁判

重大事犯は,国民の平穏な生活を大きく脅かす犯罪であって,一般的に非難の程度も大きく,重い法定刑が定められている。なお,平成16年法律第156号による刑法改正により,法定刑の下限が,殺人について懲役3年から5年に,傷害致死及び強姦について懲役2年から3年に引き上げられたほか,これらの罪に限らず,有期の懲役・禁錮の法定刑の上限が15年から20年に引き上げられた。他方,強盗致傷については,酌量減刑をした場合に執行猶予に付すことが可能となるように,法定刑の下限が懲役7年から6年に引き下げられた。

7‐1‐2‐1図は,重大事犯について,罪名ごとに,公判請求人員等の推移(平成元年以降)を見たものである。殺人,傷害致死,強盗及び強姦では,起訴猶予率は,顕著に低い(一般刑法犯全体で平成21年の起訴猶予率は43.2%。CD-ROM資料2‐3参照)。また,殺人及び放火では,心神喪失を理由に不起訴処分を受けた者が相当数に及んでいる。

7‐1‐2‐1図  公判請求人員等の推移(罪名別)

7‐1‐2‐2図は,罪名ごとに,初犯者・有前科者別(罰金以上の刑に係る前科の有無による。)の起訴人員及び有前科者率(起訴人員に占める有前科者人員の比率)の推移(平成元年以降)を見たものである。重大事犯(統計データのない傷害致死を除く。)では,前科の有無にかかわらず起訴されることが多いことによると考えられるが,一般刑法犯で起訴された者の全体と比べ,有前科者率は低い。

7‐1‐2‐2図  起訴人員(初犯者・有前科者別)・有前科者率の推移(罪名別)

7‐1‐2‐3図は,罪名ごとに,通常第一審での科刑状況の推移(平成元年以降)を見たものである。

殺人,傷害致死,強盗及び強姦では,最近,科刑がより厳しいものとなっている傾向がある。保護観察率は,年によって変動が大きいが,殺人(平成21年は27.6%),強盗(同39.4%),強姦(同50.0%)及び放火(同47.9%)では,全般的に,自動車運転過失致死傷・業過を除く刑法犯全体(同12.9%)と比べて高い(2‐3‐2‐1表参照)。

7‐1‐2‐3図  通常第一審における科刑状況の推移(罪名別)