前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択

平成22年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/2

2 窃盗を除く一般刑法犯

窃盗を除く一般刑法犯の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近30年間)は,1‐1‐2‐4図のとおりである。

認知件数は,平成12年から急増し,16年に58万1,463件と戦後最多を記録した後,17年から減少し続け,21年は,40万4,075件(前年比4万1,459件(9.3%)減)まで減少した。

検挙件数・人員は,平成15年以降,ほぼ横ばい状態であったが,19年から3年連続で減少し,21年は,検挙件数は18万3,055件(前年比1万849件(5.6%)減),検挙人員は15万7,382人(同7,980人(4.8%)減)であった(1‐1‐1‐1図も参照)。

検挙率についても,かつて90%前後で推移していたものが,平成12年から急激に低下し続け,16年に37.8%と戦後最低を記録したが,17年から上昇に転じて,43%台で推移し,21年は45.3%(前年比1.8pt上昇)であった。

1‐1‐2‐4図 一般刑法犯(窃盗を除く) 認知件数・検挙件数・検挙率の推移

1‐1‐2‐5図は,主要な罪名について,認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近20年間)を見たものである(CD-ROM資料1‐21‐3参照)。なお,盗品譲受け等,公然わいせつ,わいせつ物頒布等,略取誘拐・人身売買,通貨偽造,文書偽造等及び賭博・富くじの認知件数等並びに女子及び少年の検挙件数等については,CD-ROM参照。

1‐1‐2‐5図 一般刑法犯(主要罪名) 認知件数・検挙件数・検挙率の推移

(1)殺人1‐1‐2‐5図<1>参照)

殺人の認知件数は,おおむね横ばい傾向にあるが,平成16年から19年までわずかずつ減少し続け,20年はやや増加したものの,21年は1,094件(前年比203件(15.7%)減)と減少した。検挙率は,安定して高い水準(21年は98.2%)を維持している。

(2)強盗1‐1‐2‐5図<2>参照)

強盗の認知件数は,平成15年に昭和20年代後半以降で最多の7,664件を記録した後,平成16年から5年連続で減少したが,21年は,やや増加し,4,512件(前年比234件(5.5%)増)であった。検挙率は,17年から上昇し,21年は64.8%(同3.7pt上昇)であった。

(3)傷害・暴行・脅迫1‐1‐2‐5図<3>〜<5>参照)

傷害暴行及び脅迫の認知件数は,いずれも,平成12年に急増した。傷害の認知件数は,その後も増加し続け,15年には昭和50年以降最多の3万6,568件を記録したが,平成16年からは毎年減少し続け,21年は2万6,464件(前年比1,827件(6.5%)減)であった。暴行の認知件数は,19年まで増加し続けていたが,20年以降やや減少し,21年は2万9,638件(同2,003件(6.3%)減)であった。脅迫の認知件数は,20年までおおむね増加傾向が続いていたが,21年は減少し,2,348件(同303件(11.4%)減)であった。いずれの検挙率も,認知件数の急増に伴い大きく低下していたが,16年前後ころから上昇傾向に転じている。

1‐1‐2‐6表は,傷害,暴行及び脅迫について,平成21年における発生場所別の認知件数を見たものである。

1‐1‐2‐6表 傷害・暴行・脅迫 発生場所別認知件数

(4)詐欺1‐1‐2‐5図<6>参照)

詐欺の認知件数は,平成14年から毎年大幅に増加し続け,17年に昭和35年以降で最多の8万5,596件を記録した後,平成18年から減少に転じ,21年は4万5,162件(前年比1万9,265件(29.9%)減)であった。検挙率は,9年から急激に低下し続け,16年には32.1%と戦後最低を記録したが,17年から上昇に転じ,21年は63.7%(同16.7pt上昇)であった。

近時の詐欺の急増要因の一つは,振り込め詐欺の多発にある。振り込め詐欺(恐喝)の認知件数,検挙件数及び被害総額の推移(最近5年間)は,1‐1‐2‐7図のとおりである。平成21年には,認知件数及び被害総額は大きく減少(前年比でそれぞれ64.2%,65.3%減)する一方,検挙件数は増大(同28.8%増)し,検挙率も大きく上昇した。20年7月に発表された「振り込め詐欺撲滅アクションプラン」等の各種対策の効果が現れたといえるが,今後も,これらの対策を継続していく必要がある。

1‐1‐2‐7図 振り込め詐欺(恐喝) 認知件数・検挙件数・被害総額の推移

(5)強姦1‐1‐2‐5図<9>参照)

強姦の認知件数は,平成9年から増加傾向を示し,15年には最近20年間で最多の2,472件を記録したが,16年から減少し続け,21年は1,402件(前年比180件(11.4%)減)であった。検挙率は,10年から低下し,14年には62.3%と戦後最低を記録したが,15年から上昇傾向にあり,21年は83.0%(同0.9pt低下)であった。

(6)強制わいせつ1‐1‐2‐5図<10>参照)

強制わいせつの認知件数は,平成11年から急増し,15年には戦後最多の1万29件を記録したが,16年から減少し続け,21年は6,688件(前年比423件(5.9%)減)まで減少した。検挙率は,11年から急低下し,14年には35.5%と戦後最低を記録したが,15年から上昇に転じ,21年は53.3%(同3.3pt上昇)であった。

1‐1‐2‐8表は,強制わいせつについて,平成21年における発生場所別の認知件数を見たものである。

1‐1‐2‐8表  強制わいせつ 発生場所別認知件数

(7)公務執行妨害1‐1‐2‐5図<12>参照)

公務執行妨害の認知件数は,事犯の性質上,検挙件数とほぼ同水準で推移しているところ,平成6年から大幅な増加傾向が続き,18年には戦後最多の3,576件を記録したが,19年から減少に転じ,21年は3,071件(前年比168件(5.2%)減)であった。

(8)器物損壊1‐1‐2‐5図<14>参照)

器物損壊の認知件数は,平成12年から顕著に増加し,15年には23万743件を記録した。その後,16年から減少し続け,21年は16万9,292件(前年比8,899件(5.0%)減)であった。検挙率は,15年までおおむね低下傾向が続き,その後,16年から若干上昇傾向にあるものの,21年は7.1%であり,一般刑法犯全体と比べて低い。

1‐1‐2‐9表は,器物損壊について,平成21年における被害対象別の認知件数を見たものである。

1‐1‐2‐9表  器物損壊 被害対象別認知件数

(9)収賄等

平成21年における収賄の検察庁新規受理人員及び終局処理人員は,1‐1‐2‐10表のとおりである。

1‐1‐2‐10表  収賄 検察庁新規受理・終局処理人員

平成21年における公務員犯罪の罪名別の検察庁新規受理人員及び終局処理人員は,1‐1‐2‐11表のとおりである。新規受理人員を罪名別に見ると,自動車運転過失致死傷等が81.3%を占めている。

1‐1‐2‐11表  公務員犯罪 検察庁新規受理・終局処理人員(罪名別)

(10)組織的犯罪

組織的犯罪処罰法違反の検察庁新規受理人員及び通常第一審における没収・追徴金額の推移(最近9年間)は,1‐1‐2‐12図のとおりである。新規受理人員は,平成12年の同法施行後,増加傾向にあるが,21年は758人で前年比215人増であった。没収・追徴金額は,16年以降,5〜20億円程度で推移していたが,21年は約50億8,626万円と急増した。

1‐1‐2‐12図 組織的犯罪処罰法違反 検察庁新規受理人員・没収・追徴金額の推移