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 平成21年版 犯罪白書 第5編/第2章/第1節/2 

2 公判段階における被害者参加等

(1)被害者参加制度等

 平成12年以降,裁判所は,被害者等から被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは,原則として,公判期日において,意見の陳述を許すものとされてきた。
 この制度の実施状況(最近5年間)は,5-2-1-3表のとおりである。
 さらに,刑事訴訟法の改正(平成19年法律第95号による改正)により,平成20年12月から,一定の犯罪の被害者等が,裁判所の決定により,公判期日に出席し,被告人に対する質問を直接行うことなどができる制度(以下,この項において「被害者参加制度」という。)が施行されている。また,犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成12年法律第75号。以下「犯罪被害者等保護法」という。)及び総合法律支援法(平成16年法律第74号)の改正(平成20年法律第19号による改正)により,被害者等は,この制度に基づき事件手続への参加を弁護士に委託する場合には,資力に応じて国選被害者参加弁護士の選定を請求することもできる。被害者参加制度の施行から21年3月末までの間に,84人の被害者等が刑事裁判への参加の申出を行い,そのうち82人が参加を許可され,9人の被害者等が国選弁護士への委託を行っている(最高裁判所事務総局の資料による。)。

(2)証人の保護等

 被害者は,公判段階で証人として出廷し,証言することが少なくないが,証人を保護するための制度として,証人尋問の際に,証人と被告人や傍聴人との間を遮へいする措置を採る制度,証人を別室に在席させ,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話する方法(ビデオリンク方式)によって尋問する制度,適当と認める者を証人に付き添わせる制度がある。
 これらの制度の実施状況(最近5年間)は,5-2-1-3表のとおりである。
 また,刑事手続において被害者の氏名等の情報を保護するための制度も平成19年12月26日から施行され,20年には2,490人がこの制度の適用を受けている(最高裁判所事務総局の資料による。)。

(3)刑事和解及び損害賠償命令制度

 刑事事件の被告人と被害者等は,両者間の当該被告事件に関連する民事上の争いについて合意が成立した場合には,共同して,この合意の内容を当該被告事件の公判調書に記載することを求める申立てができる。これが公判調書に記載された場合には,その記載は裁判上の和解と同一の効力を有し(刑事和解),被告人がその内容を履行しないときは,被害者等はこの公判調書を利用して強制執行の手続を執ることができる。
 この制度の実施状況(最近5年間)は,5-2-1-3表のとおりである。
 さらに,平成20年12月から,一定の重大犯罪については,被害者等が刑事裁判所に損害賠償命令の申立てを行い,刑事裁判所が有罪判決を行った後に引き続き審理を行い,刑事裁判の訴訟記録を取り調べるなどして申立てに対する決定を行う制度が施行され,その施行から21年3月末までの間に,31件の申立てが受理され,10件が処理されている(最高裁判所事務総局の資料による。)。

(4)記録の閲覧・謄写

 公判記録の閲覧・謄写については,従来,被害者等から申出があり,正当な理由があって相当と認める場合に限って認められていたが,平成19年12月26日以降,その範囲が拡大され,裁判所は,被害者等には原則として公判記録の閲覧又は謄写を認めることとされている(いわゆる同種余罪の被害者等に対しても,損害賠償請求権の行使のために必要があり,相当と認めるときは,閲覧又は謄写が認められる。)。
 被害者等が公判記録の閲覧・謄写をした事例数(最近5年間)は,5-2-1-3表のとおりである。
 不起訴事件記録については,原則として非公開であるが,被害者等が民事訴訟において損害賠償請求権その他の権利を行使するために実況見分調書等の客観的証拠が必要と認められる場合などには,検察官は,関係者のプライバシーを侵害しないなど相当と認められる範囲で,これらの証拠の閲覧又は謄写を許可している。また,平成20年12月1日以降は,被害者参加制度の対象事件に係る不起訴記録中の客観的証拠については,被害者等が「事件の内容を知ること」等を目的とする場合であっても,原則として閲覧が認められている。

5-2-1-3表 公判段階における被害者に配慮した制度の実施状況