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 平成20年版 犯罪白書 第7編/第4章/第2節/1 

第2節 高齢保護観察対象者の処遇の実情

1 高齢対象者の属性等

 本編第2章第5節では,高齢の保護観察対象者(以下「高齢対象者」という。)の新規受理人員が,仮釈放者,保護観察付執行猶予者のいずれの種別で見ても,近年増加傾向にあることを見た。
 一口に高齢対象者といっても,彼らの保護観察の処遇を検討する場合,対象者の履歴等が大きく異なることなどの事情が,処遇の難易に影響することも少なくない。平成19年の保護観察新規受理人員を刑事施設の入所度数別に見ると,高齢の仮釈放者(646人)では,初入者(327人,50.6%),2入以上の累入者(319人,49.4%)が,ほぼ同じ比率を占めており,また高齢の保護観察付執行猶予者(211人。入所度数不詳の1人を除く。)では,刑事施設入所歴がない者が8割弱(165人,78.2%),入所歴のある者が残りの2割強(46人,21.8%)を占めている(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
 次に,平成19年の保護観察新規受理人員について,高齢の仮釈放者において該当者が多い主な罪名を見ると,窃盗(262人,40.6%),詐欺(56人,8.7%)の財産犯が両方で全体の約49%と約半数を占めるほか,覚せい剤取締法違反(72人,11.1%)が目立った。該当者はそれほど多数ではないが,殺人(36人,5.6%)が目を引くところである。高齢の保護観察付執行猶予者では,窃盗(102人,48.1%)と詐欺(14人,6.6%)の財産犯で約55%と,その比率が仮釈放者よりもやや高くなっている(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。このように高齢対象者は,仮釈放者,保護観察付執行猶予者のいずれについても,前記の財産犯の者が多いが,一般に財産犯は繰り返しやすい傾向があることから生活改善に向け指導が必要となる。仮釈放者の中で,殺人等の重大犯罪により長期間服役し,高齢になって仮釈放になった者については,高齢ゆえに,たとえ,高齢対象者本人が就労を希望したとしても,就労が困難である場合が予想され,また社会と隔絶した刑事施設に長期間いたことにより,社会復帰に当たっては日々変動する社会への適応にも苦慮する場合も予想されることから,その社会適応のための特別の訓練等が必要となる。