1 フランス
(1)累犯加重規定の適用範囲の拡大等
2005年の刑法改正により,累犯加重規定の適用範囲が拡大され,売春あっせんや暴行等の犯罪の再犯にも同規定が適用されるようになった。また,2007年の刑法改正により,これまで刑の上限のみを加重してきた累犯加重規定について,下限をも加重することとするなどした。
(2)社会司法追跡調査
社会司法追跡調査(Suivi socio-judiciaire)は,一定の性犯罪,故殺,謀殺,拷問,野蛮行為等の犯罪によって有罪判決を受けた者に対し,一定期間,刑罰適用判事(juge de l'application des peines)の監督の下で,再犯防止のための監視措置(転居の通知義務や特定の者との接触禁止等)や援助措置(社会司法追跡調査対象者の社会復帰のための援助)に従う義務を課するものである。1998年,性犯罪について導入され,2005年には,その対象が故殺,謀殺,拷問,野蛮行為等の犯罪に拡大された。
(3)刑事施設での社会復帰施策の推進
刑事施設では,他省庁や関係機関等との連携がなされており,被収容者の円滑な社会復帰を推進するための各種の施策が行われている。被収容者の教育については,文部省との協定により,同省の教職員による教育プログラムが実施されることによって,受刑者の基礎学力の向上が図られ,初等教育修了資格等各種の公教育修了資格取得のための準備がなされている。また,外出許可等を利用して,受刑中に職業訓練の受講や職業資格を取得できる制度もある。このほか,社会復帰後の生活安定に資するよう,家族との関係維持が重視されており,開放的な面会室や家族の休憩所等が刑事施設内に設けられることにより,面会の便宜が図られる等の配慮がなされている。
(4)移動電子監視措置
2005年,一定の性犯罪や生命侵害犯罪等を犯した者に対し,前記(2)の社会司法追跡調査の一手法として,移動電子監視措置(Placement sous surveillance electronique mobile)が導入された。これは,発信器を対象者の身体の一部に装着させ,その所在を司法当局が把握するもので,この措置を行うには,釈放後の再犯防止のために不可欠であるとの医学的判断が必要であるなど,一定の条件が付されている。2006年7月から試験的実施が開始され,2008年5月から一般運用されることになっている。
(5)犯罪者司法データベース
2004年,未成年者に対する性犯罪,拷問,野蛮行為を伴う故殺・謀殺,未成年者に対する売春あっせん等の一定犯罪を対象とした犯罪者司法データベース(Fichier judiciaire national automatise)の制度が設けられた。このデータベースには,本人の氏名,住所,住所変更等に関する情報が登録され,対象者本人には一定期間住所の証明等の義務が課せられる。
警察の捜査等に利用されるものであり,一般に公表はされていない。
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