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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第3章/第4節/5 

5 性犯罪

 本項においては,近時国民の関心が高まっている性犯罪(強姦,強制わいせつ及び強盗強姦をいう。以下,本項において同じ。)の再犯について検討する。ここでも,初犯者が2犯目の犯罪に至るのをいかに防止するかという視点が重要であることから,1犯目に性犯罪を犯した者に着目する。
 7-3-4-16図は,70万人初犯者・再犯者混合犯歴のうち,1犯目が性犯罪であった者(1万898人)について,その後の再犯状況を見たものである。

7-3-4-16図 1犯目が性犯罪の者の再犯の有無別構成比

 1犯目が性犯罪であった者のうち,30.0%がその後再犯に及んでいるが,再犯の中に性犯罪を含む者は5.1%にとどまっている。すなわち,1犯目が性犯罪であった者のうち24.9%は,その後犯した再犯すべてが性犯罪以外の罪名であったことになる。

 1犯目が性犯罪でありその後は性犯罪以外の罪名の再犯のみを犯した者(以下,本節において「他罪のみ再犯者」という。)の再犯の内容を,再犯者全体と比較しつつ見たものが,7-3-4-17図である。

7-3-4-17図 他罪のみ再犯者の再犯罪名

 この図は,他罪のみ再犯者と再犯者全体との別に,それぞれの人員のうち,縦軸に記載した各罪名の犯罪を犯したことがある者の人員の比率を示したものである。他罪のみ再犯者が犯した犯罪の比率は,傷害・暴行(40%超),窃盗(20%超),覚せい剤取締法違反(約10%)の順に高く,この傾向は,再犯者全体の傾向とほぼ同様である。
 一方,1犯目が性犯罪であり再犯の中にも性犯罪を含む者について,性犯罪の回数別に,再犯のすべてが性犯罪であった者とそれ以外の者(すなわち,再犯の内容に性犯罪以外の罪名も含む者)とに分けて,その人員を集計したものが,7-3-4-18図である。

7-3-4-18図 1犯目が性犯罪の者の性犯罪の回数別人員

 性犯罪を3回以上繰り返している者は,107人(分析対象者71万2,898人のうち0.015%,1犯目が性犯罪であった者1万898人のうちでは0.98%)であった。これらの者は,性犯罪に及ぶ傾向が特に強い者であるといえよう。
 これら性犯罪を多数回繰り返した者の中には,性犯罪のみを繰り返す者も相当数いるが,他方で,性犯罪の間に性犯罪以外の罪名の犯罪を犯している者も多い(ただし,性犯罪以外の罪名といっても,公然わいせつのほか,住居侵入,略取誘拐・人身売買,軽犯罪法違反といった,性犯罪と関連する内容を含む可能性がうかがわれる罪名が含まれている場合もあることに留意を要する。)。なお,性犯罪を3回以上繰り返した者が,性犯罪以外に犯した罪名の中で最も多いのは窃盗(36.2%)であった。

 次に,性犯罪を3回以上繰り返した者について,1犯目の裁判時の年齢層を見たのが,7-3-4-19図である。

7-3-4-19図 性犯罪3回以上の者の1犯目性犯罪時年齢層

 20歳代で1犯目の性犯罪を犯した者が大半であり,性犯罪に及ぶ傾向の強い者は若年時に最初の性犯罪に及んでいる。
 以上をまとめると,1犯目が性犯罪の者については,その後再犯に及んだ者の比率(30.0%)は,全体の比率(28.9%)を上回っているが,同種再犯を犯した者の比率は,性犯罪では前記のとおり5.1%であるのに対し,窃盗では28.9%,覚せい剤取締法違反では29.1%,傷害・暴行では21.1%,詐欺では11.0%(本節第1項参照)と,他の犯罪に比べて相当低い。また,1犯目の性犯罪以外にどのような罪名の犯罪を犯しているかについての傾向は,再犯者全体の場合とほぼ同様である。このことにより,性犯罪を犯す者の多くは,他の犯罪者と異なる特異な資質を有しているわけではないことが推察される。
 もっとも,他方で,一部ではあるが,性犯罪を多数回繰り返す者が存在することも判明している。これらの者においては,特に性犯罪を繰り返す傾向が強いものと認められる。また,これらの者は,その多数が若年時に初犯の性犯罪に及んでいる。