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 平成19年版 犯罪白書 第2編/第6章/第1節/2 

2 テロ対策及びマネー・ローンダリング対策

(1)国連及び関連機関における対策

 国連では,従来からテロを防止する目的で,テロリストをいずれかの国で処罰できるようにするための国際条約等が採択されてきた。1999年,国連総会において,テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約が採択された。我が国は,2002年6月に同条約を締結し,この時点で採択済みであったテロ防止対策に関する12の国際条約及び議定書のすべてについて締結済みとなった。
 2001年9月の米国における同時多発テロ事件以後,既存のテロ防止関連条約を改正する動きがあり,2005年7月には,国際原子力機関において,「核物質の防護に関する条約」の改正が採択された。さらに,同年10月,国際海事機関において,「海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」及び「大陸棚に所在する固定プラットフォームの安全に対する不法な行為の防止に関する議定書」の改正議定書が採択された。また,2005年4月には,国連総会において,新たなテロ防止関連条約である「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約」が採択され,我が国は,同年9月に署名し,2007年8月に受諾,締結国となった。

(2)ローマ/リヨン・グループにおける対策

 2001年9月の米国における同時多発テロ事件以後,G8のテロ対策専門家会合(通称ローマ・グループ)とリヨン・グループとの合同会合が開催されている。2002年5月には,「リヨン・グループ40の勧告」を見直し,国際組織犯罪対策に加え,テロ対策について定めた「国際犯罪に関するG8勧告」を採択した。

(3)金融活動作業部会における対策

 1989年のアルシュ・サミットの宣言を受けて,マネー・ローンダリング対策の推進を目的に設立された金融活動作業部会(FATF)は,現在では,これに加えてテロ資金供与に関する国際的な対策と協力の推進をも担っている。FATFでは,1990年に薬物犯罪に関するマネー・ローンダリングの犯罪化,金融機関等による顧客の身元確認及び疑わしい取引についての権限ある当局への報告,不法収益の保全及び没収,国際協力の強化等のマネー・ローンダリング対策に関する「40の勧告」を採択した。同勧告は,1996年及び2003年に改訂され,マネー・ローンダリング罪の前提犯罪の拡大,本人確認義務及び疑わしい取引の届出義務の強化,法人等の悪用防止,非金融業者・職業専門家へのマネー・ローンダリング対策の適用等が盛り込まれた。また,FATFでは,2001年10月及び2004年10月に,「テロ資金供与に関するFATF特別勧告」を採択し,テロ資金対策にも取り組んでいる。我が国は,2007年3月29日に成立した「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(平成19年法律第22号。同年4月1日施行。一部未施行)に基づき,国家公安委員会が,疑わしい取引に関する情報を外国関係機関に提供することなどにより,マネー・ローンダリング対策及びテロ資金対策における国際的な連携を強化している。

(4)G8司法・内務閣僚会合における対策

 G8司法・内務閣僚会合は,2001年9月の米国同時多発テロ事件後,国際社会が協調してテロ対策に取り組むことの必要性が高まったことを受け,2002年のカナダ・モントレンブラン会合以降は,テロ対策も議題に取り上げ,現在では先進国首脳会議(サミット)に関連する閣僚級会合と位置付けられている。
 2007年5月,ドイツ・ミュンヘンで開催された会合では,テロ対策,知的財産権の保護,児童の性的搾取対策,移民問題,アフガニスタンにおける麻薬対策等が議論された。