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 平成18年版 犯罪白書 第6編/第4章 

第4章 性犯罪の現状と対策

 平成16年11月に奈良県で発生した性犯罪前科を有する者による性的な動機に基づく女児誘拐殺人事件を契機として,性犯罪及び性犯罪前科を有する者による重大再犯事件に社会の関心が集まり,性犯罪者の再犯状況等に関する実態の解明やその再犯防止のための取組の充実を求める声が高まった。こうした状況を背景として,法務省では,法務総合研究所において,性犯罪者の実態と再犯に関する特別調査を実施するとともに,性犯罪者の再犯防止対策として,18年度から,性犯罪者に対し,矯正,保護を通じて,性犯罪者処遇プログラムの実施を開始した。
 このように,性犯罪は,国民が身近に不安を感じ,社会的関心の高い犯罪の一つとなっている。
 性犯罪は,近年,認知件数が減少し,一時期急激に低下した検挙率にも回復の兆しがある。しかし,一方では,性犯罪被害の相当部分が警察に届け出られていないとの指摘もあり,なお,憂慮すべき状況にある。
 本特集においては,このような現状を踏まえ,性犯罪の動向及び検挙人員から見た性犯罪者や特別調査の結果に基づく性犯罪者の実態,再犯状況等を分析し,性犯罪者に対する刑事処分の状況を概観した上,刑事政策の新たな動きの一つとして,矯正,保護の分野を通じて,最近,取組が開始された性犯罪者処遇プログラム等について紹介する。
 さらに,フランス,ドイツ,英国,カナダ及び米国の5か国を取り上げ,各国における性犯罪の動向及び性犯罪抑止のために採られている対策についても併せて紹介する。