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 平成18年版 犯罪白書 第6編/第3章/第4節/1 

1 刑事施設における収容動向

(1) 背景

 刑事施設の収容動向は,刑事裁判の動向,取り分け,科刑状況の大きな影響を受ける。
 新受刑者数の推移を見ると,平成4年に戦後最低(2万864人)を記録したが,5年以降,増加に転じ,17年まで一貫して増加している。17年の新受刑者数は3万2,789人であるが,これを4年と比較すると,57.2%の増加となっている。
 また,平成12年以降の新受刑者の刑期別構成比の推移は,刑期が「1年を超え2年以下」の者の比率が最も高いものの低下傾向にあり,刑期が2年を超える者の比率が上昇傾向にあるなど,全体として実刑となる者の人員の増加と刑期の長期化の傾向が認められ,これらが過剰収容の大きな原因となっている(第2編第4章第1節参照)。

(2) 収容動向と職員の負担

 刑事施設全体の一日平均収容人員の推移を見ると,新受刑者数の推移と同様,平成4年に戦後最少(4万4,876人)を記録したが,5年以降,増加に転じ,17年まで一貫して増加している。17年の一日平均収容人員は7万7,932人であり,これを4年と比較すると,73.7%の増加となっている(第2編第4章第1節2参照)。
 日本,フランス,ドイツ,英国及び米国の5か国における刑事施設の収容人員の推移(1995年から2004年までの10年間)は,6-3-4-1表のとおりである。
 刑事施設に関する制度は,国によって異なるので,単純に比較することはできないが,フランス,ドイツ,英国の収容人員の規模は,数の上では,我が国とさほど大きな差異はない。このうちドイツと英国の収容人員の推移は,我が国と比較的似ており,1995年以降,増加傾向にある。また,フランスについても,1997年から2001年まで減少傾向にあったが,2002年以降,増加傾向にある。一方,米国は,我が国を含むこれらの国と比べて,はるかに収容人員の規模も大きく,一貫して増加傾向にある。
 2004年の収容人員を,1995年における収容人員数を100とした指数で5か国別に見ると,日本が161.8と最も高く,次いで,英国(143.4),ドイツ(136.8),米国(132.1),フランス(109.8)の順である。

6-3-4-1表 5か国における刑事施設収容人員の推移

 次に,刑事施設全体の収容率の推移を見ると,平成5年以降,上昇が続き,14年に最高を記録したが,15年以降は収容定員の増加を図ったこともあり,やや低下傾向にある。しかしながら,依然として過剰収容の状況にあり,特に既決については,17年12月31日現在でも116.0%となっている(第2編第4章第1節1参照)。
 過剰収容は,刑事施設における職員の業務負担を増加させている。我が国における刑事施設の職員1人当たりの被収容者負担率(各年における刑事施設全体の一日平均収容人員を当該年度末の職員定員数で割った数値)の推移を見ると,平成8年が2.8,10年が3.0,17年が4.4と上昇し,職員の負担が増加している(法務省矯正局の資料による。)。
 また,被収容者数の増加に伴い,覚せい剤等の乱用による心身への影響が著しい受刑者,人格障害を有する受刑者など,集団処遇になじまず,周囲とのトラブルを起こしやすい傾向の顕著な受刑者が増加する傾向にある。これらの者については,刑事施設内の規則を遵守させ,整然と作業を行わせること自体が難しい場合も少なくなく,その処遇は,職員にかなりの負担となっている。