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 平成18年版 犯罪白書 第6編/第2章/第3節/2 

2 犯罪情勢と国民の意識の変化

 近年の犯罪情勢の悪化は,国民の社会意識にも大きな影響を与えている。
 内閣府が平成18年2月に実施した「社会意識に関する世論調査」において,「悪い方向に向かっている分野」として選択(複数回答可)された上位8分野は,6-2-3-2図のとおりである。

6-2-3-2図 悪い方向に向かっている分野の選択率

 近年,急速に国民の「治安」に対する不安が増している。平成18年の調査では,その前年の17年の調査に引き続き「悪い方向に向かっている分野」として「治安」が選択された比率が最も高かった。
 法務総合研究所は,平成16年2月に犯罪被害実態(暗数)調査を実施した。調査項目の中で「我が国の治安に対する認識」を尋ねたところ,現在の我が国の治安を「悪い」とする者が61.0%と最も多く,「良くも悪くもない」22.2%,「良い」13.2%,「わからない」3.6%であった。また,「夜間の一人歩きに対する不安」,「自宅に夜間一人でいることの不安」及び「自宅において不法侵入の被害に遭う不安」を尋ねたところ,12年に実施した同種調査と比較して,いずれもより高い不安を示す結果となった。
 内閣府が平成16年7月に実施した「治安に関する世論調査」において,自分や身近な人が被害に遭うかもしれないと不安になる犯罪として選択(複数回答可)された上位6犯罪類型は,6-2-3-3図のとおりである。

6-2-3-3図 被害に遭うかもしれないと不安になる犯罪

 自分や身近な人が被害に遭うかもしれないと不安になる犯罪類型として,殺人,強盗等の凶悪な犯罪より,空き巣やひったくりなどの窃盗,子供ねらいの犯罪,暴行,傷害等の身近な犯罪を選択した比率が高い。身近で発生しうる犯罪の増加が平穏な日常生活を脅かし社会不安を増大させていることがうかがわれる。
 このように,最近の意識調査の結果から,国民の犯罪に対する意識は,「安全・安心」から「不安」へと大きく変化していると認められる。この意識の変化は,我が国社会そのものの変化という大きな流れの中で生じたものと思われ,急速な犯罪情勢の悪化と相まって,犯罪に対する適切な対策の策定とその実施の必要性が高まっているといえる。