前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成18年版 犯罪白書 第5編/第2章/第1節/2 

2 公判段階における被害者の保護等

 被害者が公判段階において証人として出廷し,証言することは少なくない。証人を保護するための制度として,証人尋問の際に,証人と被告人との間に,一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置(遮へい措置)を採る制度,公判廷以外の同一構内の場所に証人を在席させ,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話する方法(ビデオリンク方式)によって尋問する制度,適当と認める者を証人に付き添わせる制度がある。
 また,裁判所は,被害者等から被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは,原則として,公判期日において,その意見を陳述させるものとされている。
 このほか,刑事被告事件の被告人と被害者等は,両者の間における当該被告事件に関連する民事上の争いについて合意が成立した場合には,共同して,この合意を当該被告事件の公判調書に記載することを求める申立てをすることができる。これが公判調書に記載された場合には,その記載は,裁判上の和解と同一の効力を有する。
 裁判確定前の訴訟記録については,刑事被告事件の係属する裁判所は,第1回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において,被害者等から当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があり,損害賠償請求権の行使のために必要があるなど正当な理由があって相当と認める場合には,申出をした者に閲覧又は謄写をさせることができる。
 これらの諸制度の実施状況は,5-2-1-3表のとおりである。

5-2-1-3表 公判段階における被害者保護制度等の実施状況

 なお,不起訴事件記録については,原則として非公開とされている。ただし,被害者等が民事訴訟において被害回復のため損害賠償請求権その他の権利を行使するために,実況見分調書,写真撮影報告書,検視調書等の客観的証拠が必要と認められる場合もあることから,検察庁では,関係者のプライバシーを侵害しないなど相当と認められる場合には,これらの証拠の閲覧又は謄写に応じている。また,民事裁判所に対して,一定の要件の下で,不起訴事件記録中の供述調書の開示や目撃者特定のための情報の提供を行っている。