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 平成17年版 犯罪白書 第4編/第5章/第2節/1 

第2節 重大事犯少年の裁判

1 少年審判

(1) 審判の概要

 家庭裁判所における終局処理を見ると,調査対象者278人のうち,4人が年齢超過により検察官送致とされたほか,138人(49.6%)が刑事処分相当により検察官送致とされ,136人(48.9%)が保護処分とされた。
 非行名別の家庭裁判所終局処理区分別構成比は,4-5-2-1図のとおりである。
 検察官送致(年齢超過によるものを含む。)の比率は,危険運転致死が90.0%と最も高く,次いで,強盗致死(51.7%)が高かった。保護責任者遺棄致死の2人は,いずれも女子であり,少年院送致と保護観察にされていた。傷害致死は,検察官送致47.8%,少年院送致39.3%,保護観察12.4%であった。

4-5-2-1図 非行名別の家庭裁判所終局処理区分別構成比

 犯行時年齢別の家庭裁判所終局処理区分別構成比は,4-5-2-2図のとおりである。
 16歳以上の少年は,年齢が高いほど検察官送致(年齢超過によるものを含む。)の比率も高くなっていた。なお,15歳の少年については,3人(このうち1人は,決定時16歳。)が検察官送致とされたが,起訴後,保護処分相当として家庭裁判所に移送され,最終的には全員が保護処分とされた。

4-5-2-2図 犯行時年齢別の家庭裁判所終局処理区分別構成比

(2) 少年法改正前と改正後の審判の比較

 改正少年法施行前の平成11年及び12年の重大事犯を対象に財団法人矯正協会附属中央研究所が実施した同種調査(以下「改正前調査」という。)と今回の特別調査(以下「改正後調査」という。)を比較する。調査対象者のうち,両調査で比較可能な16歳以上で,殺人,傷害致死及び強盗致死の者について,審判結果の変化を見る。改正前調査が対象者の年齢を少年鑑別所に観護措置により入所した時点での年齢を用いているのに対し,改正後調査では犯行時年齢を用いているため,年齢区分が厳密には同一ではないことなどから正確な比較は困難であるが,少年法改正前と改正後の審判結果を比較することは,改正少年法の運用状況を概括的に把握する上で有益であると考える。
 非行名別の検察官送致の比率の少年法改正前後の比較は,4-5-2-3図のとおりである。
 いずれの非行名でも,改正前調査と比較して改正後調査において,検察官送致の比率がかなり上昇していた。特に傷害致死は,検察官送致の比率が改正前調査(8.7%)と比較して改正後調査では53.8%とかなり上昇していた。

4-5-2-3図 非行名別検察官送致の比率の少年法改正前後の比較

 年齢別の検察官送致の比率の少年法改正前後の比較は,4-5-2-4図のとおりである。
 改正後調査でも改正前調査でも,年齢が高くなるほど検察官送致の比率が上昇しているのは同じであるが,改正前調査では18歳以下の少年の検察官送致の比率がかなり低かったのに対して,改正後調査では,16歳でも37.7%が検察官送致となっており,年齢の低い少年の検察官送致の比率の上昇が目立つ。

4-5-2-4図 年齢別検察官送致の比率の少年法改正前後の比較

(3) 原則逆送事件の審判

 既に見たように,少年法の改正前と比較して改正後の検察官送致の比率は高まっているが,重大事犯少年で犯行時の年齢が16歳以上の少年(以下「原則逆送少年」という。)236人(年齢超過により検察官送致となった4人を除く。)のうち,検察官送致とされたものは,135人(57.2%)であり,保護処分とされたものも,101人(42.8%)に上る。そこで,どのような要因が検察官送致あるいは保護処分の決定に影響を及ぼしているかを検討する。
 非行名別の審判結果(原則逆送少年)は,4-5-2-5図のとおりである。
 検察官送致の比率は,危険運転致死が90.0%と最も高く,次いで,強盗致死(60.0%),殺人(54.5%),傷害致死(53.8%)の順であった。危険運転致死では,犯行時の年齢が16歳であった少年等が保護処分とされている以外,ほとんどが検察官送致とされていた。強盗致死及び傷害致死では,成人共犯に追従する形で事件にかかわった者等が保護処分にされていた。殺人では,保護処分とされた多くの者が嬰児殺の女子少年等,家族型の者であった。

4-5-2-5図 非行名別審判結果(原則逆送少年)

 非行類型別の審判結果(原則逆送少年)は,4-5-2-6図のとおりである。
 交通型は,すべて危険運転致死であり,90.0%が検察官送致であった。
 他方,家族型は,88.0%が保護処分であり,子供をせっかん死させた男子少年や審判時に成人に近い年齢であった男子少年等が検察官送致とされていた。家族型は,既に見たように,被害者である父親等に多量の飲酒や暴力等の問題がある事例,少年に精神面での障害が認められる事例,女子による嬰児殺等が多く含まれ,保護処分とされる比率が高くなっていることがうかがわれる。
 単独型でも12人中4人(33.3%)が保護処分であった。この中には少年に精神面での障害が認められる事例,加害者である女子少年に被害者が執ように付きまとっていた事例等が含まれている。

4-5-2-6図 非行類型別審判結果(原則逆送少年)

 集団型については,この類型に属する人数が179人と多く,保護処分とされている少年も73人(40.8%)と多いことから,さらに,他の要因と審判結果との関連について分析を行う。
 犯行主導者別の審判結果(集団型の原則逆送少年)は,4-5-2-7図のとおりである。
 検察官送致の比率は,本人主導の場合が97.4%であり,次いで,共犯主導の場合(49.2%),主導者なしの場合(47.4%)であった。

4-5-2-7図 犯行主導者別審判結果(集団型の原則逆送少年)

 集団型の少年の審判結果と当該少年本人の暴力の程度との関連を見るために,法務総合研究所が把握した資料を基に集団型の少年の暴力の程度を「強い」,「中程度」,「弱い」,「暴力なし」に分類したところ,暴力の程度が「強い」と認められるものの検察官送致の比率は,89.6%とかなり高く,次いで,「中程度」(58.2%),「暴力なし」(28.1%),「弱い」(20.0%)の順であった。「暴力なし」の方が「弱い」よりも検察官送致の比率が高くなっているのは,「暴力なし」には,年長者で犯行時に主導的に指示等を発していたが,自らは直接的な暴力は振るわなかった者が含まれているためである。なお,暴力の程度が「強い」にもかかわらず,保護処分とされた者には,年長の共犯者の指示によって暴力を振るった者等が含まれている。
 さらに,集団型の少年の審判結果と年齢及び保護処分歴について見ると,まず,犯行時の年齢ごとの検察官送致の比率は,16歳45.1%,17歳60.8%,18歳59.5%,19歳77.1%と年齢が上がるにつれて上昇していた。保護処分歴との関連では,保護観察回数ごとの検察官送致の比率は,「なし」52.8%,「1回」71.1%,「2回」100.0%で,少年院送致回数ごとの検察官送致の比率は,「なし」56.7%,「1回」84.6%,「2回」100.0%であった。いずれも保護処分歴が多いほど検察官送致の比率も高くなっていた。
 以上のように,集団型については,主導者であったか,被害者にどの程度の致命傷となる暴力を振るったか,年齢,保護処分歴等の様々な要因が,検察官送致になるか保護処分になるかの決定に影響を及ぼしているものと認められた。