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1 非行少年に対する処遇手続の流れ (1) 家庭裁判所送致までの処遇手続 ア 犯罪少年 警察等は,犯罪少年(交通反則金納付事件に係るものを除く。)を検挙した場合,罰金以下の刑に当たる犯罪については,事件を直接家庭裁判所に送致し,それ以外の犯罪については,一般の事件と同様,検察官に送致しなければならない(犯罪少年,触法少年及び虞犯少年の概念については,本編第2章参照。)。
検察官は,少年の被擬事件について捜査を遂げた結果,犯罪の嫌疑があると認めるとき,又は犯罪の嫌疑がない場合でも家庭裁判所の審判に付すべき事由があると認めるときは,事件を家庭裁判所に送致しなければならず,その際,少年の処遇に関して,意見をつけることができる。 なお,検察官は,少年の被疑事件においては,やむを得ない場合でなければ勾留を請求することができない。少年を勾留する場合には,少年鑑別所に拘禁することができる。また,検察官は,裁判官に対して,勾留の請求に代え,観護措置(少年鑑別所送致)を請求することができ,その場合,裁判官が発する令状によって,少年は少年鑑別所に収容される。 イ 触法少年及び虞犯少年 触法少年及び14歳未満の虞犯少年については,児童福祉法上の措置が優先される。保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を発見した者は,これを市町村,都道府県の福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならず,家庭裁判所は,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これらの少年を審判に付することができる。
14歳以上の虞犯少年については,原則として,これを発見した者が家庭裁判所に通告しなければならない。警察官又は保護者は,この虞犯少年が18歳未満であり,かつ,直接これを家庭裁判所に送致し,又は通告するよりも,まず児童福祉法による措置にゆだねるのが適当であると認めるときは,その少年を直接児童相談所に通告することができる。 (2) 家庭裁判所における処遇手続 ア 家庭裁判所の調査と少年鑑別所の鑑別 家庭裁判所は,検察官等から事件の送致を受けたときは,事件について,調査しなければならず,家庭裁判所調査官に命じて,少年,保護者又は参考人の取調べその他の必要な調査を行わせることができる。この調査は,なるべく,少年,保護者又は関係人の行状,経歴,素質,環境等について,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して,これを行うように努めなければならないとされており,家庭裁判所は,審判を行うため必要があるときは,観護措置の決定により,少年鑑別所に送致し,その資質鑑別を求めることができる。
少年鑑別所は,送致された少年を収容するとともに,医学,心理学,教育学,社会学その他の知識に基づいて少年の資質の鑑別を行う。 家庭裁判所は,調査の結果,児童福祉法の規定による措置を相当と認めるときは,事件を都道府県知事又は児童相談所長に送致し,審判に付することができず,又は審判に付することが相当でないと認めるときは,審判不開始決定をして事件を終局させる。審判を開始するのが相当であると認めるときは,審判開始の決定をする。 イ 家庭裁判所の審判 家庭裁判所における審判は,通常一人の裁判官が取り扱うが,合議体で審判をする旨の決定を合議体でした事件においては,裁判官の合議体でこれを取り扱う。審判は,非公開で,懇切を旨として和やかに行うとともに,非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならないとされている。審判期日には,少年及び保護者を呼び出し,必要に応じて家庭裁判所調査官を出席させるほか,審判の席に,少年の親族,教員その他相当と認める者の在席を許すことができる。
少年及び保護者は,家庭裁判所の許可を受けて,弁護士以外の者を付添人に選任することができるが,弁護士を付添人に選任するには,家庭裁判所の許可を要しない。また,保護者は,家庭裁判所の許可を受けて,付添人となることができる。付添人は,審判の席に出席することができる。 家庭裁判所は,犯罪少年に係る事件であって,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪,そのほか死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪のものにおいて,その非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは,決定をもって,審判に検察官を出席させることができる。この場合において,少年に弁護士である付添人がないときは,弁護士である国選付添人を付さなければならない。 なお,家庭裁判所は,保護処分を決定するため必要があると認めるときは,相当の期間,家庭裁判所調査官に少年を直接観察させる試験観察に付することができ,また,必要があると認めるときは,保護者に対し,少年の監護に関する責任を自覚させ,その非行を防止するため,調査又は審判において,自ら訓戒,指導その他の必要な措置をとり,又は家庭裁判所調査官に命じてこれらの措置をとらせることができる。 審判の結果,保護処分に付することができず,又は保護処分に付する必要がないと認めるときは,不処分の決定をしなければならない。児童福祉法の規定による措置を相当と認めるときは,事件を都道府県知事又は児童相談所長に送致しなければならない。死刑,懲役又は禁錮に当たる罪の事件について,刑事処分を相当と認めるときは,事件を検察官に送致するが,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって,その罪を犯すとき16歳以上の少年に係るものについては,犯行の動機及び態様,犯行後の情況,少年の性格,年齢,行状及び環境その他の事情を考慮し,刑事処分以外の措置を相当と認めるときを除き,事件を検察官に送致しなければならない。これらの場合以外は,保護処分をしなければならず,保護観察,児童自立支援施設・児童養護施設送致(18歳未満)又は少年院送致(14歳以上)のいずれかの決定を行う。 少年,その法定代理人又は付添人は,保護処分の決定に対しては,決定に影響を及ぼす法令の違反,重大な事実の誤認又は処分の著しい不当を理由とするときに限り,2週間以内に,抗告をすることができる(ただし,付添人は,選任者である保護者の明示した意思に反して,抗告をすることはできない。)。他方,検察官は,検察官関与の決定があった事件について,保護処分に付さない決定又は保護処分の決定に対し,非行事実の認定に関し,決定に影響を及ぼす法令の違反又は重大な事実の誤認があることを理由とするときに限り,高等裁判所に対し,2週間以内に,抗告審として事件を受理すべきことを申し立てることができる。 (3) 保護処分に係る処遇手続 ア 少年院送致と仮退院後の保護観察 少年院送致となった少年は,年齢,犯罪的傾向の進度,心身の故障の有無等に応じて,初等,中等,特別又は医療のいずれかの種類の少年院に収容され,矯正教育を受けつつ更生への道を歩み,地方更生保護委員会の決定により仮退院が許され出院した後には,退院までの期間,保護観察に付される。
イ 保護観察 家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年は,原則として,20歳に達するまで保護観察官及び保護司から改善更生のために必要な指導監督及び補導援護を受けるが,その期間中に行状が安定し,再犯のおそれがなくなったと認められた場合は,保護観察の解除等の措置がとられる。
ウ 児童自立支援施設・児童養護施設送致 児童自立支援施設・児童養護施設送致となった少年は,児童福祉法による施設である児童自立支援施設又は児童養護施設に収容される。
(4) 刑事処分に係る処遇手続 ア 起訴と刑事裁判 家庭裁判所から事件の送致を受けた検察官は,原則として公訴を提起しなければならない。起訴された少年に対するその後の処遇の流れは,成人の場合と同様であるが,罪を犯すとき18歳未満の者に対しては,死刑をもって処断すべきときは無期刑を科し,無期刑をもって処断すべきときであっても,10年以上15年以下において懲役又は禁錮を科することができ,少年に対して長期3年以上の有期の懲役又は禁錮をもって処断すべきときは,その刑の範囲内において不定期刑(刑の短期と長期を定める。短期は5年,長期は10年を超えることはできない。)を言い渡す。
イ 刑の執行 懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年に対しては,少年刑務所又は刑務所内の特に区画した場所でその刑を執行し,16歳未満の少年については,16歳に達するまでの間,少年院において,その刑を執行することができ,この場合,懲役刑を科せられた少年であっても,その間は作業を課さず,矯正教育を授ける。
ウ 仮出獄と保護観察 少年のとき懲役又は禁錮の言渡しを受けた者の仮出獄は,無期刑の言渡しを受けた者については7年(ただし,罪を犯すとき18歳未満であったことにより死刑をもって処断すべきところを無期刑の言渡しを受けた者については10年),罪を犯すとき18歳未満であったことにより無期刑をもって処断すべきところを有期刑の言渡しを受けた者については3年,不定期刑の言渡しを受けた者についてはその刑の短期の3分の1を,それぞれ経過した後,許すことができる。少年刑務所等で刑の執行を受けた後に地方更生保護委員会の決定により仮出獄を許されて出所した少年は,仮出獄の期間,保護観察に付される。 このほか,刑の執行を猶予されて保護観察に付された少年も,猶予の期間中保護観察の対象となる。
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