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 平成17年版 犯罪白書 第4編/第3章/第3節/3 

3 保護者の自発的対応を促す働き掛け

 平均世帯人員の減少や共働き世帯の増加等,保護者自身を取り巻く環境が大きく変化してきている。このような中で,父母同士の意思の疎通や地域からの支えが得られないままストレスをため込み,子供の虐待に走ったり,子供の問題行動に対して適切に対処するだけの余裕のない保護者が増えているとも指摘される。
 非行少年調査では,一般青年と比較して家庭生活に対する非行少年の満足度が低く,非行少年の方が家庭内の不適応を感じやすいことがうかがわれた。保護者調査においても,子供にその場その場で口うるさく指導はするが,子供に好きなようにさせてきたと認識している保護者の比率が高かった。少年院教官調査でも,保護者について,「子供の行動に対する責任感がない」,「子供の言いなりになっている」,「子供の行動に無関心である」と指摘する回答の比率が高く,指導力に問題のある非行少年の保護者が「増えた」と認識している少年院教官が80%を超えていた。
 非行少年の父親と母親との間にも多くの点で認識に相違が認められた。父親の方が子育てに対する関心の乏しさが問題であったと認識している比率が高かったのに対し,母親の方は,夫婦間の意見の不一致,過干渉が問題であったと認識している比率が高かった。子供の将来や親子関係についても,父親の方が今後を楽観的に見ているのに対し,母親の方は,指導の行き詰まりや親自身の変化の必要性を感じている比率が高かった。
 こうした父母の認識の違いによって,父母間の葛藤が生じて家族の情緒的交流が失われたり,父母間で子供の非行の責任を押しつけ合ったり,一貫性のある毅然とした対応を子供にとれなくなっていることも考えられる。他方,少年も親のちぐはぐな対応によって,混乱したり,心情的に不安定となって,非行に走る場合もあると思われる。
 非行少年の更生のための保護者の自発的対応を促す働き掛けにおいては,こうした父母の認識の違いを自ら確認させることが,その第一歩になると考えられる。その上で,子供の立ち直りのために何が必要かを共に考えさせていく必要がある。これまでの子育てを父母ともに客観的に振り返らせ,子供との感情交流の場を設けること等によって,親の側の自発的な変化を促していくことが重要である。
 例えば,少年院や保護観察所においては,保護者会や保護者のためのグループワーク等,家族関係調整のための取組の強化に努めている。保護者へのこうした働き掛けの中で,子供に対する親の責任や親自身の態度変化の重要性等に気付かせ,保護者の自発的対応を促す契機としている。こうした教育・処遇によって,保護者が子供を適切に受容し,親としての責任を自覚することが,非行少年にとっても,親との和解を果たし,家庭から巣立っていくために不可欠であろう。
 以上のとおり,調査結果を踏まえながら,非行少年の資質面,対人関係面及び家族関係面のそれぞれの問題に応じた処遇上の留意点について考察してきた。非行少年の質的な変化及び処遇の困難化によって,非行少年処遇に様々な課題が生じ,それに対応して,関係機関の処遇の充実強化及び連携体制の構築が図られてきている。
 さらに,少年たちは,家族,地域社会の中で成長し,大人になっていくことから,社会の中で,少年が真に更生を果たすためには,ボランティア団体を含めた地域の関係機関・団体が連携し,社会の中で,多様な活動の機会を提供したり,少年たちの居場所作りを一層進める必要がある。被害者との関係においても,加害者である少年の更生と被害者の支援の双方が重要であることを十分に認識した上で,関係機関が連携して地域社会の人々の協力を得ながら,非行少年に対する働き掛けや被害者への支援を一層推し進めていかなければならない。
 次章以下では,非行少年の処遇の内容について,具体的に分析・検討していく。