前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成17年版 犯罪白書 第4編/第3章/第2節/2 

2 資質,規範意識等の問題

 「最近の非行少年の処遇において,以前より大きくなっていると感じる資質面の問題には,どのようなものがありますか」との質問に対し,少年院教官が回答した結果は,4-3-2-4図のとおりである。 「人に対する思いやりや人の痛みに対する理解力・想像力に欠ける」とする点につき,「大きくなっている」とする比率が63.2%と最も高く,次いで,「自分の感情をうまくコントロールできない」及び「忍耐心がなく,我慢ができない」がともに55.1%であった。少年院教官は,最近の非行少年の資質に関し,他人に対する共感性や感情統制の面において問題が多いと認識し,これらの面において処遇上の困難を感じているようである。

4-3-2-4図 最近の非行少年の資質面の問題(少年院教官調査)

 「最近の非行少年の処遇において,以前より大きくなっていると感じる規範意識面の問題には,どのようなものがありますか」との質問に対し,少年院教官が回答した結果は,4-3-2-5図のとおりである。
 「その場の好き嫌いなど,感覚・感情で物事を判断する」とする点につき,「大きくなっている」とする比率が60.6%と最も高く,次いで,「多少のことは許してもらえると軽く考えている」(54.0%), 「被害者に対する謝罪の気持ちがない」(32.8%)の順であった。
 これに対し,「物事の善悪を見極めることができない」,「決まりの大切さを理解できない」などとする点につき,「大きくなっている」とする比率は,比較的低く,少年院教官は,最近の非行少年の規範意識について,善悪の見極めができないというよりは,その場の感情・感覚に任せて意思決定をしたり,規範を軽視する態度が目に付くと考えていることがうかがわれる。

4-3-2-5図 最近の非行少年の規範意識面の問題(少年院教官調査)

 「最近の非行少年の処遇において,以前より大きくなっていると感じる交友関係の問題には,どのようなものがありますか」との質問に対し,少年院教官が回答した結果は,4-3-2-6図のとおりである。
 「対人関係を円滑に結ぶスキルが身に付いていない」とする点につき,「大きくなっている」とする比率が57.5%と最も高く,次いで,「周りの誘いを断れない」(40.5%),「心から信頼し合える関係を持てない」(40.3%)の順であった。少年院教官は,最近の非行少年の交友関係について,信頼関係に基づいた対人関係を築いていく力が弱いために,周囲に迎合して行動しやすいと考えていることがうかがわれる。

4-3-2-6図 最近の非行少年の交友関係面の問題(少年院教官調査)

 「最近の非行少年の処遇において,以前より大きくなっていると感じる学校・職場・地域社会との関係の問題には,どのようなものがありますか」との質問に対し,少年院教官が回答した結果は,4-3-2-7図のとおりである。
 「将来,何をしたいか分からない」とする点につき,「大きくなっている」とする比率が64.8%と最も高く,次いで,「社会の中に少年の居場所がない」(37.0%),「大人や社会一般に対する反抗心,反発が強い」(34.6%)の順であった。少年院教官は,非行少年が社会内で更生していく上で,少年自身の将来目標の不確かさが大きな問題であると考えていることがうかがわれる。

4-3-2-7図 最近の非行少年の社会関係面の問題(少年院教官調査)