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 平成17年版 犯罪白書 第2編/第5章/第2節/3 

3 関連する諸施策等

(1) 帰住予定地の環境調整

 帰住予定地の環境調整とは,引受人との面接等を通じ,受刑者の帰住予定先の状況を確かめ,本人の更生にふさわしいものとなるよう働きかけることをいう。帰住予定地を管轄する保護観察所の長は,行刑施設から懲役又は禁錮に処せられた者を収容したときに作成した身上調査書の送付を受けた後,担当の保護観察官又は保護司を指名して,環境調整を実施する。
 環境調整の件数は,受刑者の増加に伴って増加しており,平成16年には,受刑者4万6,444人(前年比2.3%増)について新たに環境調整を実施した(保護統計年報による。)。

(2) 仮釈放準備調査制度と施設駐在官制度

 仮釈放準備調査は,仮釈放審理の充実等を目的とするものであり,地方委員会による仮釈放申請受理前に,保護観察官が,行刑施設へ出向いて本人と面接し,社会復帰上の問題点を把握し,必要な措置等について行刑施設の職員と協議を行うことをいう。
 平成16年にこの調査を実施した人員は,受刑者3万2,996人(前年比0.5%減)であった(法務省保護局の資料による。)。
 また,施設駐在官制度とは,地方委員会の保護観察官が,仮釈放準備調査を充実させるため,行刑施設に駐在する制度をいい,平成17年4月現在,全国10刑務所に施設駐在官が配置されている。

(3) 長期刑受刑者の仮出獄審理の充実

 地方委員会では,無期刑受刑者及び執行すべき刑期が8年以上の長期刑の受刑者の仮出獄審理に当たり,主査委員による複数回の面接や複数委員による面接を行うなど,本人の心身の状況,被害者感情を始めとする関係事項について調査と審理を尽くすとともに,本人に対する指導・助言,帰住予定地の環境調整等に配慮している。

(4) 仮出獄における被害者に対する配慮

 仮出獄の要件である「改悛の状」は,社会感情等を総合的に考慮して判定されるが,被害者等の感情は,社会感情を判断する要素の一つである。地方委員会では,必要に応じて,被害者又は遺族の感情,被害弁償の有無等についても調査し,仮出獄審理の重要な判断資料としている。
 また,受刑者による犯罪の被害者等に対して,出所情報を通知する制度が設けられている(第3編第2章第2節6参照)。