3 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律 現行の監獄法(明治41年法律第28号)は,明治41年に制定されて以来,実質的な改正がされることがなかったため,被収容者の権利義務関係や職員の権限が明確ではなく,受刑者処遇の内容についても十分な規定が設けられていないなど,極めて不十分なものとなってきた。 そのため,これまで,3度にわたり監獄法を全面改正する刑事施設法案が国会に提出されたが,いわゆる代用監獄(監獄法1条3項により監獄に代用される警察官署に附属する留置場)制度をめぐる関係機関との意見の対立を背景として,いずれも衆議院の解散により廃案となった。 監獄法の改正につき,行刑改革会議の提言においても,時代の変化に見合った内容となるよう全面的に改正すべきであるとされたことから,平成16年7月から,法務省は,監獄法改正の枠組みについて,警察庁及び日本弁護士連合会と協議し,その協議を踏まえ,まずは,喫緊の課題である受刑者の処遇に関する部分を中心とした立法を先行させ,引き続き,未決拘禁者等の処遇に関する立法を可能な限り速やかに行うこととした。そして,平成17年第162回通常国会に刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案が提出された。同法律は,同年5月18日に成立し,公布の日(同月25日)から1年以内の政令で定める日から施行される。 なお,未決拘禁者等の処遇については,刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律(監獄法の題名を改めたものであり,受刑者の処遇には適用されないよう改められたもの。)において定められることとなる。 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(平成17年法律第50号)の主な内容は,次のとおりである。 (1) 刑事施設の基本及びその管理運営 刑事施設の基本及びその管理運営に関する事項を定めている。なお,刑事施設の運営の透明性を確保するために,刑事施設視察委員会の設置,組織及び権限についても定めている。 (2) 受刑者の処遇 受刑者の処遇について定めており,次の点等を主な内容としている。 ア 受刑者の権利及び義務の範囲を明らかにするとともに,その生活及び行動に制限を加える必要がある場合につき,その根拠及び限界を定めている。 イ 受刑者に対して,適正な生活条件の保障を図っている。 ウ 医療,運動等その健康の維持のために適切な措置を講じている。 エ 受刑者の改善更生の意欲を喚起し,社会生活に適応する能力の育成を図るための処遇方法について,以下のような内容の規定等を設けている。 (ア)受刑者には矯正処遇として作業を行わせるとともに,改善更生及び円滑な社会復帰を図るため必要な指導を行うものとする。 (イ)矯正処遇は,受刑者ごとに作成する処遇要領に基づき,必要に応じ,専門的知識及び技術を活用して行う。 (ウ)受刑者の自発性及び自律性をかん養するため,その生活や行動に対する制限を,処遇目的を達成する見込みが高まるに従い順次緩和するものとする。 (エ)受刑者の改善更生の意欲を喚起するため,優遇措置を講ずるものとする。 (オ)一定の条件を備える受刑者について,円滑な社会復帰を図るため,職員の同行なしに外出及び外泊することを許すことができるものとする。 オ 面会,信書の発受等の外部交通についての規定を整備している。 カ 一定の刑事施設の長の措置についての審査の申請,身体に対する違法な有形力の行使等についての事実の申告等の不服申立制度を整備している。 (3)労役場留置者の処遇,刑事施設に代用される警察留置場に係る規定の整備その他所要の措置を講じている。
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