前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和39年版 犯罪白書 第三編/第四章/四/2 

2 所在不明者

 保護観察に付された者のなかには,保護観察所に出頭しないまま,あるいは担当者との接触の始まったのちに,所在不明になる者がある。これらの者は,保護観察から離脱した者で,再犯の危険性が強いと考えられる。
 最近五年間の所在不明者は,III-86表のとおりで,いずれの保護観察種別においても累年増加している。特に仮出獄者と保護観察付執行猶予者においてその比率が高く,前者では二一・一%,後者では一五・四%にも達している。

III-86表 種類別所在不明状況累年比較(昭和33〜37年)

 保護観察付執行猶予者に所在不明者が多いのは,前述した保護観察所への不出頭者の多いことや,保護観察期間中も届出だけで自由に転居できること等によると思われるが,仮出獄者の場合は,III-87表からみると,主として保護観察の停止決定をうけたケースの累積によるものである。仮出獄者が,保護観察期間中居住すべき場所に居住せず,所在不明となって保護観察を実施することができなくなったときは,保護観察所長の申請により,地方委員会は保護観察の停止の決定をすることができるが,この決定は刑期の進行を停止する効果を有するから,時効の完成がないかぎり保護観察は終結せず,このため停止事件はしだいに累積することとなるのである。

III-87表 仮出獄者中の所在不明人員と率(昭和33〜37年)

 また,六大都市管轄の各保護観察所とその他の保護観察所の所在不明率を累年別にみたのがIII-88表で,これによると,神戸を除き一般に大都市における所在不明率が高く,とくに東京,名古屋,横浜の各保護観察所における所在不明率の急上昇化が目だっている。

III-88表 六大都市管轄保護観察所とその他の観察所とにおける所在不明状況(昭和33〜37年)

 所在不明者の増加の原因については,いろいろ考えられるが,その一つに保護観察対象者の移動の増加をあげねばならない。III-89表は新受事件に対する移送事件の割合を,保護観察種別累年別にみたものであるが,これによると,保護観察期間の短い仮出獄者の場合を除き,受理事件の二割前後が移送受理事件であり,全体として昭和三三年の九・五%から昭和三七年には,そのおよそ二倍の一八・一%に急増しており,しかもIII-4図に示すように,おもに九州,東北地方から,関東,近畿,中部の主要都市へおもむく,遠距離転居の多いことが考えられる。

III-89表 全国保護観察所が受理した保護観察事件の新受に対する移送の割合(昭和33〜37年)

III-4図保護観察対象者の移動に伴う保護観察人員の地方委員会別増減状況(昭和37年)

 所在不明になった対象者の所在発見のためには,保護観察所相互間はもちろん,裁判所,矯正施設,警察等の関係機関との間にも密接な連けいが必要であるが,所在不明者中には,本人の転住に伴って行なわれる保護観察所間の移送ケースの占める割合が多いといわれていることからみると,ケース移送の手続や,これに先だって行なわれる居住確認をいっそう迅速に処理するなどの方法により,所在不明を防止するように配慮する必要があろう。